きぬきぬ

ティエリー・トグルドーの憂鬱のきぬきぬのレビュー・感想・評価

3.5
一人の失業で困窮する男に視点を当て、確かにケン・ローチやダルデンヌ兄弟的なアプローチある作品だと思う。
リストラからの失業、職業訓練受けても経験者優遇で再就職難しいとか、ハローワークの対応とか、特に主人公くらいの年齢ならなおさら難しいって、日本も同じじゃないか~っと思った。
長年勤めた会社からリストラされての失業、とても身近な題材をドキュメンタリータッチに撮られていて、しかも主人公には身障者の息子が居るし、アパルトマンのローンもある、失業して1年半これは苦境。
慣れた仕事を失い、仕事仲間も失い、それでも生活の為に今ある自分をも押し殺し、履歴書の書き方の指摘や職安の面接実習場面にもあるけど、一からやり直して、とにかく安定の為の仕事にありつこうとする。ほんと何処の国も同じだなあ。
失業と再就職の為の活動で、家族を抱える生活も、減り行く貯えも不安で、すでに疲れ果て気持ちがささくれ立つのも解るし、頑固過ぎるとも思えるけどプライドを守ろうとするのも解る。でも障害ある息子に苦労させたくないのだろう。
やっと雇われた大型スーパーの監視員の仕事でも、実直ながら、そこで目撃した事で責められ仕事を追われる人々と自らを同調させているのか、根の優しさからなのか。確かに人の罪を見つけて暴くのは神経擦り減らす仕事でもあるけど。
確かにそんな些細なことくらいで(軽く見過ごされそうな事に思えても、しっかりクビになることではあるけどな)同じ職場の同僚を責め疑い失業に追いやる立場になるのは、やってられないと追い詰められる主人公の気持ちもわからなくもないけど、でも彼の場合、背負っているものの為にも職場放棄はどうかと思うのだけどな。
失業と再就職の苦労をしてきた主人公にとっては、何か不祥事あれば退職させようとする企業の考えが耐えられず、彼の人間性を尊重したのだろうけど、実際、憂鬱どころでなく、さらに困窮すれば、頭下げざる負えなくなることだってあるのだろうなあ、と社会の厳しさを虚しく思った次第。

社会派ドラマながらフランスで観客動員数100万人のヒットとなったのも、フランスの社会の現状を描いてるからだろうな。
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