ひでG

ティエリー・トグルドーの憂鬱のひでGのレビュー・感想・評価

3.3
タイトル通りほんとうに「憂鬱」な作品です。

ティエリーは退職近い歳なのですが、長年勤めた会社から集団解雇されます。
仲間たちは、「会社と闘う!」と法廷闘争も辞さない覚悟ですが、ティエリは、もうそんな面倒なことに関わりたくない。

再就職の為、斡旋所でも思うようにいかず、

発達障害のある一人息子の将来も心配で、

家を売りに出すが、買い手と金銭が折り合わない。

そんな中で、ようやく再就職先が見つかる。

スーパーのモニター室で万引をチェックする係。

万引しても居直ったり、駄々こねたりする輩に、憂鬱になるのかと思ったら、
ティエリーにとって、もっと憂鬱な仕事が待っていた。
そのモニターでレジ係など店員も監視するのだ。

この映画、これらの主人公が抱える憂鬱が淡々と、たわから余計に重く、重く描かれる。


彼がとても憂鬱な中にいて、そのひとつずつは同情もするのだが、

だから、本作は私たちに何を望んでいるのかがはっきりしない。

状況や心情は分かった。分かり過ぎるくらいに分かった。

じゃあ、観客に再就職の難しさや人が人を管理する社会の問題点を考えてほしいのか、

あるいは、苦しい現状の中でも、希望を捨てずにというメッセージか欲しいのか、

何を求め、何を訴えたいのかが見えてこない作品だった。

オープニングは、「わたしはダニエル・クレイグ」に似ているが、「ダニエル〜」が
鋭く管理的に陥る社会を追求し、その中にヒューマンな部分も浮き立たせているのとは違い、
深刻な割に深まりのない一本だった。
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