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動物農場のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

動物農場(1954年製作の映画)
2.5
No.273[普通に楽しめるスターリニズムの甘口寓話] 50点

ジョージ・オーウェルの歴史的傑作である寓話「動物農場」の映画化作品であり、他の映画化作品同様ある程度の改変が行われているが、短くまとめることを考えると特に気にならなかった。しかし、書かれたのがスターリン全盛期の1944年なのに対して、映画化に際して製作中にスターリンが亡くなったため、ラストが大きく異なる。原作のラストは近隣農場の経営者(人間)を家に招いたナポレオン=スターリンやスクィーラー=モロトフが彼らとカードに興じ、それを窓の外から見ていた動物たちは人間とブタの区別が付かなくなってしまった、という鬱エンドなのだが、本作品のラストは労働者たる動物たちが他の農場からも集まり、人間のように振る舞うブタたちを殺すという爽快エンドになってしまった。オーウェルの言いたかったことはスターリニズムの痛烈な批判に加えて、それを煽情的に用いる西側諸国の人間たちをも皮肉る”全方位叩き”なのだが、どうも意味合いが弱まってしまったように思える。メージャー爺さん=レーニンやスノーボール=トロツキーを若干殉教者的に描いているのもいけ好かないが、説明臭くないのは評価できる。

つまり、原作のほうが好きだと言いたいのだが、いわゆる”原作厨”ではないことを明記しておく。敬愛するオーウェルの敬愛する「動物農場」だけは譲れない。

ちなみに、原作で一番好きなキャラはロバのベンジャミンだ。彼はインテリであり、ブタ共の悪行について誰よりも早く気が付いていたが、それについて意見することはなかった。原作ではバートルビー並に動くことはしなかったが、映画ではラストで率先して動物たちを率いている。

原作も傑作なので是非とも読んで欲しい。短い中に凝縮されたオーウェルの鋭い眼差しがあなたを貫くだろう。
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