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波のした、土のうえの一のレビュー・感想・評価

波のした、土のうえ(2014年製作の映画)
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かつて彼女が暮らしていた場所、そこに運び込まれた土の山に向けて、幼少期の記憶も津波の記憶も、時系列の混濁した綯い交ぜの過去を重ねる声。思い出が土に埋められていくような、初めにあった喪失感とはまた違う寂しさは僕には想像がつかなくてハッとする。「戻りたい場所がどこにあるのか、わからないと思う時がある」。SDカードに残った震災前の映像を観、「この中に戻りたい」という声。この声=一人称の文章は、あくまで詩作なのだが、1部と2部に関しては、声は本人の朗読なのだ。完全なドキュメントではない、しかし的確な詩文を読み上げる本当の声という不思議。3部は、無くなることが約束された花壇の記録。ここでも思い出すのは、リチャード・マグワイアのグラフィック・ノベル『HERE』だったりする。
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