泣く準備万端で臨みましたが…
見所:
粗野なケイシー・アフレック
丁寧で細やかな映画でした
リアリティは人それぞれのもの
15分で終わる話
賞獲りに行ってんだろ
あらすじ:
ボストン郊外で便利屋として働くリーは一匹狼。人との交流を嫌い、喧嘩っぱやい。そうなった原因は彼の過去に。
ある日仕事中に電話。唯一心を許していた兄の訃報。急いで兄の暮らしていた生まれ故郷へ。そこで出会ったのは兄が入っていた肉体と、兄の遺した奇妙な遺言だった…。
ケチのつけどころが無い丁寧な脚本と演出、それに俳優が渾身の演技でこたえる。メッセージは“前を向く”。はい、良い映画。
うーん…。
作品と呼ばれるものは何でも、作り手の純粋な意志が反映されているか否かが最も大事な要素の一つだと思っています。表現が自由なこの時代(の我が国)なればこそです。受け取る側を慮った作品はその場でウケても残りはしません。受け手に一時的な優越感と甘ったるい自己陶酔をもたらすだけ。それは二流作品です。
本気でやりたい放題やってる駄作の方がよほど人心を動かします。色褪せない傑作はたとえ不出来でも、いつの日も初体験者の度肝を抜くものです。
これは好き嫌いで括りきれない一点だと思っています。
さて本作の主人公が抱える過去は壮絶な負です。こんな体験をしている人は殆どいませんが、つまるところは喪失と自責、ならびにそれらへの対峙がメインテーマになります。
最終的に主人公は他人を受け入れはじめ、前進します。鑑賞者は同情を禁じ得ない展開。ところがなんとそこでおしまい。彼には依然として拠り所が無いままなのに。この先まだ迷子になるかもしれないのに。
そりゃもうその先が見たいんですよ、フィクションなんだし。ここで終えたんじゃ意味が無く、中身がほぼゼロです。細やかってだけじゃどうしようもない。
あと、ため息混じりにあるあると言える鬱ネタが即ちリアリティでは決してありません。そこに大きく時間を割くのは小賢しい。ことフィクションにおいては。
脳内補完を要さない、ボロが無いものが絶賛される昨今。でも決して残りはしないであろう二流作品。