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マンチェスター・バイ・ザ・シーのninekoのレビュー・感想・評価

4.6
海を美しく撮れている映画は傑作である。

佐々木敦の『未知との遭遇』で読んだ内容を思い出した。結局のところ我々の生は、いくつもの偶然(あるいは、運命)が重なって「起こってしまったこと」のさらなる堆積でしかない。というより、当事者からしてみればそうとしか捉えようがないし、だから時として苦しいのだ。どうしようもなく過去に囚われ、間延びしたディスコミュニケーションを重ね、時に行き詰まって自家中毒を起こしながら、男はさまよい、映画はだらだらと続く。奇跡のような出来事は起こらないし、トラウマは克服されないだろう。我々にできることと言えば、巡り合わせた人間のそばにとりあえず居ることくらいである。ラスト付近、文字通りキャッチボールを試みる(試みる、というところがポイントだ)男と甥の姿に託されたもの。それをベタだと切って捨てるほどには、僕は冷めてはいないつもりだ。ぜひもう一度観たい。
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