はま

マンチェスター・バイ・ザ・シーのはまのレビュー・感想・評価

4.5
観終わった直後はそうでもなくても、少しした後に気付くこの作品の存在感。ずっと胸に残る彼らの人生。
各地で目にしていた評判の意味はこういうことだったのか…と、今にしてやっと理解し、このスコアです。
評価は非常に難しくとも、人の心に残る作品であることには間違いない、そんな名作です。

こちらも四国では都会から3ヶ月ほど遅れての公開…私の人生で一番と言ってもいいほど観たくてたまらない映画でした。

アカデミー賞はじめとする各賞では監督、脚本、そして演技部門で3つと、たくさんノミネートされていましたが、今作を観ると納得せざるを得ない結果でした。

脚本賞を受賞した時にケニー監督がステージで言ってました。

「…そして、ありがとう。ケイシー・アフレック、ケイシー・アフレック、ケイシー・アフレック…!」

観終わってわかる、この感情。
ミシェル・ウィリアムズや各キャストのアンサンブルはもちろんだけど、今作の主演は間違いなくケイシーだったし、彼の演技をもってして初めて一つの作品になっていました。

【父親の死】で始まる物語は、普通ならその息子にフォーカスが当たりそうだけど、今作のメインはその弟リー。
兄ジョーの死以上に乗り越えられない何かを抱えたリーと、初めて乗り越えるべき何かにぶち当たったジョーの息子パトリック。

これを観ていて一番思ったのは、「自分の気持ちに関係なく、時間は進むんだ」ということ……そこに一番涙を流しました。

でもこの映画のすごいところは、本当に彼らの人生を切り取ったような映像を作っているところ。
脚本の時点で起承転結つくって面白さを出すのが当然だけど、今作はそういうのが本当になくて、なんなら無駄に見えるシーンすらある。
でもそのシーンひとつひとつが「彼らの存在」を確かにしているし、彼らは本当に生きていました。

会話の間、表情、喋り方、全てが完璧な演技で、でも全く演技じゃない、日常。
マンチェスターに行って彼らを見守っていきたい、って心の底から思ったし、これから先の長い人生で、この時のことを振り返る事があったら聞いてみたいこともたくさんある。
…なぜか今、これを書いていて泣きそうになりました。


マンチェスター・バイ・ザ・シーは人生。
人の人生を切り取った一部。
それはリーの人生でもあるし、パトリックの人生でもある。
1人の人生じゃなくなった時に、時間は動き出すんだと思う。
はま

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