踊る猫

マンチェスター・バイ・ザ・シーの踊る猫のレビュー・感想・評価

4.7
過去と現在がせっかちに入れ違うストーリー展開。そして、終始(スラングこそ矢継ぎ早に吐き出されるものの)控え目にじわじわとこちらを惹いていく俳優陣の演技、そして演出の妙。最初は戸惑ったものの、少しずつこの映画が備え持っている「渋味」に打ちのめされてしまった。私自身は宗教に関心もないし教養もないので、この作品が描かんとしている「原罪」を理解出来たかというと言い難い。だけれども、この映画が有無を言わせずふたり(あるいは三人)の悩める人物の「Panic Attack」を描いている、その手つきは無駄があるようでなく、思わせぶりに持っていって肩透かしを食らわせる老獪な熟練の技術から生じる独特の旨味を備えていると思う。何処か是枝裕和監督、あるいは黒沢清監督のホームドラマに漂う祝福感を感じさせられもした。ある意味ではメインストリームで行われていることの真逆を行っているとも考えられる、なかなか強かな作品だ。
踊る猫

踊る猫