まさか…これは年齢を重ねれば重ねるほど心に染みる映画なのでは。
鑑賞前の情報としては、主演のケイシー・アフレックがアカデミー賞を獲ったということぐらい。
どれどれ、どんなもんかな?と思っていたら……
表情…っ!
コイツ、なんて顔するんだ…っ!
どんな人生歩めばこんな表情になるんだ…っ!!
本編中盤で納得。
アパートの便利屋として水漏れ修理、雪かきなどを黙々とこなす有能だけど、無礼で無愛想で苦情の絶えないリーという男。
兄の死で故郷に帰ることになった彼の回想をはさみながら物語は進行していく。
故郷の町で、昔馴染みの知り合いに優しい言葉をかけられても、女性から誘いを受けても彼は心を閉ざしたまま、誰に対しても距離をとる。
もし、過去に大きな過ちを冒し、その過去から抜け出せないままだとしたらどうすればいいのか。
静かに物語は進み、静かに物語は終わる。
明確な解答めいたものがないまま終わるのは、今年に公開された『スリービルボード』に近いかもしれないけど、スリーの方は映画的な派手さがある。
映画という世界の中では、辛い過去を乗り越えて強くなる人や、何かを手にする人を多く見るが、本作のリーには何もない。
だからいい。
現実にはリーのような人の方が多いだろう。
この映画はそんな人たちに、そっと寄り添う。
乗り越えなさいとも、強くなりなさいとも言わない監督の優しさ。
そして、ケイシーの表情。
リーが子供を可愛がるシーン、
リーがパトリックと話すシーン、
いいなぁ。
何年か後、自分の人間力を高めたら、もっと心に染みる映画になるだろうなぁ。