Kana

マンチェスター・バイ・ザ・シーのKanaのレビュー・感想・評価

4.0
命が終わり、長い長い長い冬を越えて、また命が終わり、長い冬に終わりを告げる。
止まっていた時間が動き出す。

正直、なんといえばよいのか…。
最初は、ダメ人間が家族の大切さや真実の愛を知り、諦めかけた人生を取り戻す感動作なのかと思っていましたが、全然違う。
救いもなく、哀れみもなく、人生は残酷。
起きたことは変えられないし、過去を忘れることも忘れさせることもできないし、悲しみを糧に生きるなんて、希望の残された人間にしか言えないわけで。
ジョーがどれほどの人間に愛されていて、どれほどリーを愛していたかということ。
そしてそれが、誰より自分自身を憎む人間にとって、どれほど苦しいことかということ。
愛することも、愛されることも、生きることも、死ぬことも許せずに、命を消費する日々。
そんな彼に、さらに重荷を背負わせることで、最後にもう一度背中を押したかったんですね。
愛と向き合うことも、死と向き合うことも、生と向き合うことも、どれも命と向き合うということ。
向き合い方は人それぞれで、正解はなく、ただ自分に嘘をついてはいけない。
きちんと目を逸らさずに向き合わないと、前に進めなくなるのです。
逆に見つめ直すことで、どんなに長い間留まっていた時間でも、いつだって動き出すことはできるんですね。
Kana

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