主人公が経験した、想像を絶する苦悩、葛藤の描き方が絶妙だった。
事実に基づかないたいていの物語は、対峙している苦悩や葛藤についてはきちんと描き切り、それにきちんと向き合って乗り越えていくことをメインに進行していくけれど、この作品はまったくちがう切り口だった。多くのことは詳細に語られず、観る側はそれらを想像するしかないところが多い。主人公だけでなく、その周りにいる人々の感情の機微や思考すらも、はっきりと表されているにもかかわらず詳細に語られてはいない。そこがこの作品のとても素晴らしいところであり、真に心に迫る物語たらしめるポイントだと感じました。さまざまなシーンで涙が止まらなかったのはそのおかげだと思います。