マンチェスター・バイ・ザ・シーの作品情報・感想・評価

マンチェスター・バイ・ザ・シー2016年製作の映画)

Manchester by the Sea

上映日:2017年05月13日

製作国:

上映時間:137分

ジャンル:

3.9

あらすじ

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」に投稿された感想・評価

komo

komoの感想・評価

4.3
ボストンで便利屋として働くリー(ケイシー・アフレック)は、仕事の腕は良いが性格に難のある男。かつて故郷で暮らしていた頃、自身の過失によって家族を失ってしまったという過去があり、それ以来他者に心を閉ざしてしまっていた。
しかし兄のジョー(カイル・チャンドラー)が病死したという報せが届き、辛い思い出の残る故郷へと向かうことになる。
更には自分がジョーの息子・パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人として選ばれていたことを知り困惑する。
その地で暮らし続けたいパトリックと故郷に戻ることを拒むリーの、葛藤の日々が始まった。

過去の出来事を悔やみながらも罰を受けることすら許されずに孤独を抱えるリーは、社会的にも感情的にも行き場のない男です。『行き場のないまま』でいることで自分を罰しているようにも見えました。
そんな彼に対してパトリックは、16歳という若い年齢の割に地に足の着いた少年でした。趣味もスポーツも友人関係も充実していて、更には2人も恋人がいます。
予期せず重要な責任義務を与えられた上に、その子どもが(ある意味リーよりも)成熟した人間だという現実は、ふらついた生活をしていたリーにとって非常に酷なことであると言えます。

リーが町を出た理由を知っているはずのジョーはなぜ、彼が苦しむことを分かっていながら息子を託そうと思ったのか。
ジョーは生前、誠実で誰からも好かれる人間でした。そんな人物が実の弟をわざわざ苦しめるための道を選ぶとは考えられません。
ジョーのリーに対する情は、とても深いものであったと思います。
それと並んで、ジョーは息子のパトリックのことも愛し、誇りに感じていたはずです。
だからこそ愛する2人を信頼していたのではないかなと考えます。それは「リーにパトリックを守らせなければ」だとか「パトリックにリーを救ってほしい」などの責任観念というよりも、ただ純粋に自分が愛した2人が、共に助け合い生きてゆく未来を望んだのではないか。そんな風に解釈しています。

飄々とした性格のパトリックが、冷たい場所に安置されている父をふと思い出して取り乱すシーンや、
再会した元妻のランディ(ミシェル・ウィリアムズ)が涙ながらにリーと対話するシーンが、暗闇の中にそっと浮かび上がる小さな炎のようで、物哀しかったです。

リーはパトリックとの日々によって少しずつ心情を変えて行くものの、その人格に強い変化は見えません。
リーは『良い人間にならないこと』によって自分の心を守っているのかもしれません。それこそ痛みを抱えた今のままの自分としてこの先を生きてゆくことが彼にとって重要なのだとしたら、たとえ親族であろうともその領域に踏み込むことはできないように思います。
しかし賢いパトリックならば、そんなリーをありのままに汲んでくれるかも知れません。

永遠にふさがることのない傷口に潮風が触れてしまったような、そんな"滲みる"作品でした。
ケイシー・アフレックが「俺には乗り越えられない」と言ったけど、さすがにこんな状況簡単に乗り越えられる訳がないよなー。乗り越えられないままそれでも生きていかなきゃいかない。つらい、、
マンチェスターってこんな綺麗なとこなんだなー。
McLovin

McLovinの感想・評価

3.5
俺なら耐えられないような挫折に向かわざる得ない状況に心がヒリヒリした。綺麗な海と素敵な思い出に対して、グレーな寒空と突き付けてくる現実の対比が見事。
逃げる事は悪い事ではない。
喪失感に覆われた映画だ。

小津安二郎がもしもハリウッドで映画を撮るとしたら、本作で主人公リーを演じたケイシー・アフレックを笠智衆の代わりに起用するだろう。それほど芝居臭くない自然な佇まいは実兄ベン・アンフレックを超える抜群の存在感。ケイシーは本作での演技が認められ見事アカデミー主演男優賞に輝いている。

ボストンで便利屋を営むリー(ケイシー・アフレック)は、腕はいいが人間関係を築くのが大の苦手。顧客とのトラブルも後を絶たない。バーで女に粉をかけられても話が続かず、男性客とは目があっただけでぶち切れるかなりの問題男。そんなリーの元に故郷マンチェスターに住む兄ジョーの訃報が届くのだが…

水回りの修理の合間に一人せっせと雪かきをするリー。人付き合いをさけるこの孤独な男リーにも、実は愛妻や子供にも恵まれた時代があったようなのだ。そんな幸福な過去と、兄ジョーが死んで一人残された甥パトリックの面倒をみることになった現在が交互に映し出され、映画はリーを襲ったある悲劇へと観客をみちびいていく。

イギリスではなくアメリカの北東部にある小さな港街マンチェスター。ボストンでは修理に訪れる度に聞きたくもない愚痴を住民に聞かされていたリーだったが、リーの過去を噂で知っているマンチェスターの人々はどこかよそよそしく他人行儀。両市とも雪深いという共通点がありながら、カメラが映し出す街の雰囲気はきわめて対照的である。

友人がたくさんいるマンチェスターを離れたくないパトリックを連れて、すぐにでもボストンに逃げ帰りたくなるほどの悲劇とはいったい?監督のケネス・ロナーガンは、主人公のリーに無理やりその悲しみを乗り越えさせるようなシナリオはあえて書かなかった。マンチェスターの住人に会うたびに過去へと引き戻されるリーは、親父を喪った悲しみから立ち直ったパトリックを残して一人ボストンへ帰ることを決めるのだ。

マンチェスター時代の兄が自分にとても良くしてくれたように、甥の希望通り何とかこのマンチェスターで仕事を見つけようと努力するリー。しかし人生を変えてしまうほどの悲劇を経験したリーにとって、その思い出がたくさん詰まった街で暮らすのはいうなれば生き地獄だ。人間乗り越えられない悲しみの一つや二つあったっていいじゃないその方がむしろ自然でしょ、とロナーガンは優しい口調で観客に語りかける。

マンチェスター・バイ・ザ・シーにつもった雪は当分の間消えそうにないが、(海に囲まれた街のように)他人の悲しみに寄り添う経験をしたリーの中ではきっと何かが変わったはず。そんな明るい予感さえ感じさせるラストシーンの台詞が秀逸だ。

「まだこの(しみったれた)話を続けるのか」「いいや」
声を失った。。。
無口になってもいい。
yukko

yukkoの感想・評価

3.9
しんどいなー。

主人公は寡黙で、観ているコッチも、そのぶきっちょな生き方にハラハラさせられた。

大人は自分ひとりでカタをつけなきゃなんない。

別れた妻が言った「死なないで」が切ない。
妻が言った酷い事ってなんだったんだろう。
想像はつくけど。


しんどいけど、観て良かった。
わざわざ映画を観るのにそこにリアリティを求めるってのも、考えてみたら変わった話で。でもやっぱり、リアルに感じられるからこそ心が動くということもあるわけで。
言葉を省くことが、かえって雄弁なこともあるし。
これはそういう、大人の映画でした。
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