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ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツの一人旅のレビュー・感想・評価

5.0
ジョン・リー・ハンコック監督作。

マクドナルドのフランチャイズ化に成功した実業家の半生を描いたドラマ。

世界最大のファストフードチェーン「マクドナルド」の二次的創業者である実在の人物:レイ・クロック(1902-1984)の半生の映画化で、主演のマイケル・キートンが資本主義・競争主義の鬼と化す主人公を熱演しています。

マクドナルドは誰もが知る世界最大の外食チェーンですが(店舗数は世界2位。1位はサブウェイ)、本作はディック&マック兄弟が経営するカリフォルニアの第1号店に始まったローカルなハンバーガーショップが、いかにして泣く子も黙る巨大企業に急成長を遂げていったのか、そのプロセスを事実に基づき活写しています。

マクドナルド急成長の立役者だったのが本作の主人公レイ・クロック。1954年、シェイクミキサーのセールスマンだったクロックはマクドナルド兄弟が経営するハンバーガーショップに出会います。そこで彼が感銘を受けたのが、徹底的に効率化された厨房&サービス。クロックはハンバーガーの味ではなく、店舗そのものの“システム”を丸ごとフランチャイズ化しようと考えます(日本のコンビニと同じ戦略です)。得意の営業トークで兄弟を説得し、自分が主体となってマクドナルドのフランチャイズ化に乗り出すのです。例えるならば両者の関係は走り幅跳び。兄弟の助走を利用してクロックが飛躍します。

本作はマクドナルド兄弟との契約を足掛かりに知恵を絞りながら加盟店舗数を拡大していくクロックの苦悩と奮闘を、利益の追求に走り続けるクロックを疑問視するマクドナルド兄弟との対立や、加盟店オーナーの美人妻との出逢いをきっかけに自分の妻(ローラ・ダーン)とすれ違い始めるクロックの私生活の変容を絡めて描き出しています。そして、執念と覚悟を胸に終わりなき事業拡大を誓うクロックと、彼とは対照的に“ある程度の成功で満足”する兄弟の姿が対比的に映し出され、資本主義・競争主義国家アメリカにおいて“勝ちに拘る者”がそうでない者を容赦なく駆逐するシビアな現実を見つめています。

マクドナルド豆知識がお勉強になる作品でもあります。商品(ハンバーガー)を紙袋に包んで提供し始めた理由や、トレードマークである黄金のアーチに込められた想い、名物マックシェイクを巡る試行錯誤といったエピソードを興味深く知ることができますし、お店に入れば誰でも一度は目にしたことのあるであろう光景――“完成したバーガーが勢いよくスライドされる” に創業時における兄弟のアイデアが今も現役で受け継がれているという実感が湧くでしょう。
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