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ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツのtakatoのレビュー・感想・評価

4.1
 久々に良質な小品といえる作品に出会ってしまった。映像、俳優、ストーリー、この三つが優れている、これこそまず良い映画の条件だろう。本作はこの条件をしっかり抑えているし、単純に善悪で割りけれない奥行のある作品となっている。

 基本的なあらすじ通りだけど、実に語りが上手い!。畳み掛けるようなテンポの良さで楽しみ語るかと思えば、情緒的なシーンでは饒舌にならず俳優の演技で静かに語らせる上手さまである。マクドナルド兄弟の創業話は正にプロジェクトⅩ的、主役のクロックの方はえげつないアメリカンドリームの成功話としてのどちらも興味深くて実に面白い。

 さらに、なにより本作の核になっているのは主役のマイケルキートンの力だろう。やはりこの人はそうとうな役者である。「ナイトクローラー」のギレンホールのように完全にいっちゃってる悪役的な主人公ではなく、微妙に揺れながらも帝王の道を進む人間として描くのに成功している。冒頭の辺りの少ない描写だけで、悲しいほどに彼が成功に飢え、あこがれ続けてる男である男であることがハッキリとわかる。そして、不動産業としてのマクドナルドというアドバイスを与えるメフィストフェレス的な男と出会ってからはもう止まらない、というより止まれなくなってしまった男として描かれている。

 そして、ラスト。最初のシーンと輪を描くように見えながら、彼は、自身の成功譚をスピーチの練習を言い淀んで困惑したような表情で鏡の前から去っていく。全てを手に入れたはずだけど、これでいいのか?。わかりやすく単純に描かない、正に人間を描けている作品。
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