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ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツの小のレビュー・感想・評価

3.9
マクドナルド関連で初めて読んだ本が、当時日本マクドナルド社長だった藤田田氏が書いた『ユダヤの商法』。これが十代後半の自分にはとても面白く、藤田田氏の他の本もほとんど読んだ。

マクドナルドの英語の発音は全然違うのだけれど日本語で言いやすいようにマクドナルドにしたとか、ロゴマークの赤と黄色の色使いが注意を引いて食欲にも訴えるとか、コーラの温度は4℃が一番おいしいとか、家族をターゲットにして子どもの頃からハンバーガーを食べてもらえば、一生ハンバーガーを食べてもらえるし、さらにその人の子どももハンバーガーを食べるようになるとか。

マーケティングの手法として今では当然のことかもしれないけれど、当時としては斬新で、自分に無限の可能性があるかのように感じていた歳ということもあってか、こりゃスゴイや、いつか自分も、と夢中になった。

2007年に『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』という、本作のもととなる本が出版され、これも読んだ。内容はユニクロの柳井正氏、ソフトバンクの孫正義氏が絶賛する、金儲けの指南書みたいな感じ。しかし、この頃になると自分への幻想はほぼ消滅し、金儲けが疑いもなく価値があり、良いことであるとも思えなくなっていた。

そして本作は、本にはなかった(と思う)レイ・クロックのダークサイドの部分やマクドナルド兄弟との関係についてもしっかり描かれていて、そこがイイ。

画期的で合理的なビジネスモデルを考案するも、品質と顧客サービスを第一に考え店舗展開に慎重なマクドナルド兄弟(特に弟)に対し、パートナーになりたいレイ・クロックはイケイケ。そりが合わない者同士のはずだけれど、マクドナルド兄弟もそこは弱い人間(特に兄)だからか、レイ・クロックと組むことにしてしまう。

自分達の承諾なしでは何もできないように契約でレイ・クロックを縛ったマクドナルド兄弟だったが、レイ・クロックはコンサルタントの入れ知恵によって盲点をつき、契約をなし崩しにしていく。

レイ・クロックの非人間的な振る舞いにより、大切なはずの人々との関係は破綻していく。悪役のレイ・クロックには落とし穴にはまるとかしてもらいたいところだけれど、実話をもとにしているだけに、溜飲が下がることはない。

ビジネスの世界で大成功するような人というのは非人間的な部分がある。逆に言えば、どこかしら非人間的でないと大成功はできない、ということかもしれない。「ああはなれないし、なりたくもない」(マクドナルド兄)というのが一般人の本音だと思うけれど、成功した者にはヒガミに聞こえるだろうなあ。

レイ・クロックの手腕なしにはマクドナルドが全世界に展開することもなく、従って日本でマクドナルドのハンバーガーを食べられなかったかもしれない。しかし、マクドナルド、もしくは似たようなチェーン店がなかったら世界は不幸だったのかといえばどうだろう?

2014年7月、マクドナルドで食品消費期限切れ問題が発覚する。こうした問題についても映画で描いて欲しかった。とはいえ、レイ・クロックが顧客よりも利益を重視する“ファウンダー”であったことは十分描かれているから、そこは察してくれよ、ということなのかもしれない。

●物語(50%×4.0):2.00
・レイ・クロックとマクドナルド兄弟がきっちり描かれていて面白い。もっとスカッとしたかったけど、これはこれで良しかな。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・マクドナルド兄弟が理想のキッチンを設計していくシーンが好き。

●映像、音、音楽(20%×3.5):0.70
・普通に良し。
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