垂直落下式サミング

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
マクドナルド創業者(ファウンダー)レイ・クロックの自伝的な映画。
ミルクシェイクのミキサーを売る営業マンのレイ・クロック。ある日、一つの店舗から6台も注文があったと知り、同じ機械がいくつも必要な店とはどんなに繁盛しているのだろうと、その店「マクドナルド」を訪れるところから物語が始まる。
マクドナルドのようなビジネスモデルが世界に広まればもっと自社の商品が売れるだろうと閃いたレイは、兄弟にフランチャイズ契約を頼み込んで、これの権利を得る。そして、持ち前の根気と向上心で任せられた店舗経営を何とか軌道にのせるのだが、メニューの味や調理行程を変えることを許さないマクドナルド兄弟との間に、次第に確執が生じていくのである。
マクドナルドの店舗を見たレイ・クロックが合理化された内装と、絞り込まれたメニューと、その仕事の手際の早さに魅入る場面は、まさに目から鱗といった様子で、さらにそこに自らが培ってきたビジネススキルを加えることで、宇宙的なひらめきを生まんとする瞬間だ。
マクドナルド兄弟が何度もデモンストレーションを行いキッチンのレイアウトを試行錯誤する手法など、トライ&エラーをスピーディに見せるくだりは創造的で面白い。これが如何に革新的だったか。ジャストインタイムと作業行程のシステム化。非常に工業的である。
本作でマクドナルド兄弟は「レイ・クロックという強欲な男に食い物にされ、すべてを奪われた可哀想な敗者」として設定されているが、実際そうなのだろうか?レイは合法的にマクドナルド店舗経営の全権利を手にしたし、兄弟には彼等が普通に飲食店経営をしていたら一生手に入らないような額の金を払っている。
彼等が築き上げた軽食店のシステム化のアイデアは画期的だったのだけど、そもそもコイツらは地元の店舗を一軒しか管理できずにフランチャイズを諦めたような奴等だ。地方ごとの気候の変化に対策を講じず、何が何でも自分のマニュアルに従わせようとしたバカなんだぞ。こんな奴等がトップでいたらせっかく大きくした組織がダメになってしまう。
トップのエゴで全体が不利益を被るのなら、頭をすげ替えて組織の生き残りを図るのが道理だろう。企業が成長する過程で、組織の長が理想主義の頭でっかちから、状況に合わせてよりベターな判断を下せる立ち回りの上手い者に交替しただけで、こんなことよくあることだ。この映画はレイ・クロックの成り上がりを皮肉ると同時に、才能はあったのに実力がなかったために敗者となったマクドナルド兄弟のことを冷ややかにみていた。
トランプへのカウンターだとか言われるが、本作をみて、強欲が悪とか、向上心は悪とか、そういう単一的な受け取り方をするのは危険だと思うけどな。マクドナルド兄弟は敗者だ。惨めでも可哀そうでも何でもない。レイ・クロックがいなければ、紙に包まれたハンバーガーサンドウィッチを提供する店は一代で廃れ、今日のように世界中に広まってはいないはずだ。