亘

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツの亘のレビュー・感想・評価

3.9
【品質にこだわる保守的「元祖」vs 拡大に取り憑かれた超野心的「本家」】
レイ・クロックは、売れないミキサー販売員。ミキサー8台の突然の注文に興味を持った彼は、注文者マクドナルド兄弟を訪ねる。そこで彼は革新的レストランに可能性を見出だす。

世界的ハンバーガーチェーン、マクドナルドの創業を描いた物語。主人公レイ・クロックはマクドナルド自体を作ったわけではない。彼は、マクドナルド兄弟の作ったシステムを発展させ、"チェーン店としての"マクドナルドを創業したのだ。そして質を重視する「元祖」マクドナルド兄弟と対立する。

クロックは、成功者である一方で野心のためには手段を選ばない強引さと他人の感情を読めないサイコパスな面を持つ。フランチャイズ開始後マクドナルド兄弟の前に現れる姿は不気味だし、マクドナルド兄弟の兄マックの見舞いは見ていて唖然とした。クロックにほったらかしにされ続けてもなお彼を支えようした妻レセルを、彼は無視した上で捨て他の女性と結婚する。全くもって嫌な男である。

でも彼のビジネスセンスとか根気には目を見張るものがある。マクドナルド兄弟の店舗を見て名案を閃き、しがない聖書販売員をフランチャイジーに抜擢し、キッチン担当の一青年を側近にしてついには会長にする。成功すると優秀な人が集まり更なる成功をする。そしてマクドナルド兄弟に倣った他の人が出来なかったような大成功を彼は収めた。革新的なシステムを作ったマクドナルド兄弟に発想力は劣るし、後にCEOになるハリーに知識量では劣る。それでも成功して名を残したのはレイ・クロックなのだ。

マクドナルド兄弟を無視して拡大を進めた彼は、ついに彼らを無視してマクドナルドの正統を名乗ってしまう。 まさに「元祖vs本家」の構図。見ていて彼の行動にはどうかと思うところはある。でもクロックがいなかったら今マクドナルドなんて知られてないし、こんな作品も作られていない。そんな「正義が勝つんじゃない、勝った方が正義」という言葉を思い出させる作品だった。
現在のマクドナルドが添加物たっぷりでさらに品質問題が起きるのは、クロックの「本家」マクドナルドだからこそなのだろう。

印象に残ったシーン:クロックがレセルを無視し続けるシーン。クロックがフランチャイジーをスカウトするシーン。クロックが店名の秘密を明かすシーン。
亘