マーくんパパ

菊とギロチンのマーくんパパのレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
3.9
大正12年関東大震災を受けて在郷軍人らによる朝鮮人狩りや暴動が頻発、軍部による国家統制の色が濃くなり国家転覆や風紀紊乱への取締りが強化されてきた時代を背景に女相撲興業の世界に飛び込んだ花菊とアナーキー政治結社ギロチン社の中濱鐡らの交わりを描いた映画で題名もその通りだが“菊”には天皇制の問題も折込みされてる。朝鮮人娼婦から女相撲に転身した十勝川が在郷軍人のリンチに会い「天皇陛下〜パンザーイ」と言わされる所は涙を禁じ得ない。昭和30年代後期まで存在した女相撲興業の世界、社会の底辺の女たちが食うために寄せ集まり、その後の女子プロレス同様エロ目当ての好奇の観客入り混じった特殊な見せ物興業の中で純真に力を競い合った時代風習が興味をそそる。一方で大半は若くして処刑されて行った実在のアナーキストたちの理想に燃えた徒花青春時代をこの女相撲力士たちとフィクションクロスさせた巧みなドラマ構成で189 分長編が苦痛なく観おおせた。