大正末期、関東大震災直後の日本。世の中には不穏な空気が漂い、閉塞感ばかりが増していた。そんな中、東京近郊に女相撲一座「玉岩興行」がやって来る。女力士たちは元遊女の十勝川をはじめ、わけありの娘ばかりであった。タイトルの『菊とギロチン』の“菊”は夫の暴力に耐えかねて家出した貧しい農家の嫁だった新人力士の花菊のこと、“ギロチン”は関東大震災後の混乱期に実在した主義者と呼ばれるアナーキスト集団ギロチン社のこと。
189分…退屈な病院生活だから観ることができたかも。
個人的に『福田村事件』から始まった一連の流れ。
アナーキスト集団“ギロチン社”と明治〜大正〜昭和と隆盛を極めた女相撲をシンクロさせたストーリーは秀逸だった。
民族差別、女性蔑視、LGBT、主義者への弾圧・粛清、琉球差別…などなど様々なヘイト問題に触れながら物語は進んでいく。中でも自警団による朝鮮人への拷問は狂気じみていた。
だが自警団員が国粋主義になった経緯を語られると決して彼らも根っからの悪人ではないことが分かる。が、しかし、同じ人間を蔑み拷問する姿は狂っていることに間違いはない。力づくで女性をあやめる男もまた不快極まりない。
189分の末に辿り着いた先は…人が持つ不快な業(ごう)を瀬々監督に見せつけられた気がした。
東出昌大や井浦新がこの映画を経て『福田村事件』の撮影に入ったということは興味深い。
「知らなかった」では済まされないこの流れはまだまだ続く。