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菊とギロチンの小のレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
3.8
女相撲メインの物語かと思いきや大杉栄を師と仰ぐアナキスト・グループ「ギロチン社」の青年達が絡んでくる青春群像劇。

瀬々敬久監督は時代設定を大正末期にした理由を聞かれ、<そもそもギロチン社のことを描きたいと思っていたから>と答えつつ、素行の悪い彼らは<一般の人から見るとちょっとついていけんわという感じがあ>るので、<それだけで一本の映画にはできないなと思>い、女相撲の興行が当時行われていたことを知り、<二つを合体させたら面白いと思った>という。

この組み合わせはナカナカ上手くハマっていると思う。ギロチン社の若者たちが<社会を変えたいという切実な思いはある>にもかかわらず<観念だけで生きてる>感じで、<身体性が伴っていないところがある>ことと<対照的に、女相撲の人たちはまさに身体性があって、地に足をつけて生きている。>
(https://www.huffingtonpost.jp/hotaka-sugimoto/movie-20180702_a_23472120/)

ギロチン社の青年たち、女相撲の力士たちともに、不平等で理不尽な社会からはみ出している状況は同じながらも、男が口先ばかりで行動も刹那的なのに対し、女は目標を持ちしっかり進んでいこうとしていることが良く伝わってくる。

ただ、自分的に残念だったのは、ギロチン社の中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)にイマイチ感情移入できなかったこと。

彼らの社会変革への切実な思いと純粋な気持ちはしっかりと描かれていると思うけれど、そのことが彼らの悪い部分を超えられず、さらに女相撲の力士達との対比もあって、結局しょーもない奴らという印象を変えることができなかった。

一方、女相撲に対する偏見や差別の中、力士たちが懸命に取り組む姿に胸が熱くなる。対戦は迫力があって見応え十分。皆さん、すごく練習したのだろういう気がする。主役の一人、花菊を務めた木竜麻生さんは役にとてもあっていると思う。

<今の社会はキレイなものばかり残してる気がします。社会全体が安全とか安心みたいな方向に行きがちなんですよね。(略) 危険なものや猥雑なものはあらかじめ排除しようという、そういう空気はすごく感じますよね>(瀬々監督)という現代は、大正末期に似ているらしい。

劇中で感じた変えたいという欲望と行動する力は、今どういう方向に向かって出現しているのだろう。そんなことも少し考えた。

●物語(50%×3.5):1.75
・もう一度観たらギロチン社の若者達に対する印象は変わるかもしれない。しかし、3時間超はちょっと長いかな。

●演技、演出(30%×4.5):1.35
・女相撲の力士たちが良かった。あと、渋川清彦がやっぱりイイ。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・時代の雰囲気が良く出ていたのではないかと。
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