しゅう

菊とギロチンのしゅうのレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
4.2
この映画、時代小説好きとしては、山田風太郎の明治物を連想した。

史実と奇想が奔放に絡み合うところや、権力・社会体制の非情さとそれに抗う人々のアナーキズムなどは、もし山田風太郎が"大正物"を書いていたならきっとこんな物語になったのでは、と思わせる(もっとも風太郎なら女力士たちはより強くなって男どもを圧倒したかも)。

また、映画としての語り口もとんでもなくエネルギッシュ。巧みな省略や手際の良い話運びなど一切考えず、「それも語るのか!」と驚かずにいられない程あらゆるエピソードについてトコトン描き尽くす3時間には、只々興奮させられた。

役者陣も素晴らしく、特に女相撲の一座は男女全員最高な上にチームとしてのアンサンブルも絶妙で(ギロチン社の男どものバラバラ振りとは対照的)、彼女たちの場面なら何時間でも観ていたい気分。

対して、ギロチン社の男どもでは矢張り東出くんに唸らされた。

先日観た「寝ても覚めても」での抑制された演技とは対照的に、今作ではケレン全開で詩人にしてアナーキストの中濱鐡を文字通り熱演。

序盤では、(その行動も含めて)空疎に響いていた彼の言葉が次第に物語とシンクロしてゆき、終盤に獄中からの手紙としてスクリーンから放たれる檄文には、映画で久々に『言葉』で痺れさせられた。