ブロックバスター

菊とギロチンのブロックバスターのレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
3.0
大正の女の子が、女相撲で頑張る話だ〜😇と、ナメた気持ちで見始めたら、ジェンダーの話もあるし、ナショナリティーの話もエスニシティーの話もある、結構骨太な話じゃないか。

実在したアナーキー集団ギロチン社と、女相撲の興行団・玉岩興行の交流の話だけど、関東大震災以降の混沌を、ギロチン社は男性の視点、主人公花菊がいる女相撲は女性の視点で、当時の激動を描いたとも捉えられる。

主人公・花菊は純粋に「強くなりたい」と願う。女性として乗り越えられない地位の低さ、そして何より手をあげる夫に打ち勝つ為に。

でも相手役の大二郎は迷う。何かに腹が立つ、でもその正体が政府なのか特権階級なのか、大き過ぎて抽象的過ぎて手も足も出せず「俺はこんなもんじゃない!」と能書きを垂れて頭を掻きむしる。

そんなギロチン社と玉岩興行が出会い、みんなで浜辺できゃっきゃうふふと戯れるシーンは、結構平和的で個人的に好き。だがしかし、花菊と大二郎の距離は一向に縮まらない(花菊が好きそうにしてるんだから、声かけろよ大二郎!となる)。

一方で、海を渡ってきた韓国人の十勝川の話も、ストーリーのスパイスになっていてとても良い。周りと協力しないし、女相撲しながら隠れて身体を売っているし、いい感じで周りの和を乱すフライデーみたいなキャラで魅力的。でも彼女の嫌われキャラの裏には、根深い差別があってね…といった具合に、彼女の存在で物語に起伏が生まれている(しかも十勝川役の韓英恵、普通に可愛い)。

十勝川とギロチン社の鐡はあれよあれよと「いい感じ」になるのに、主役である花菊と大二郎はモヤモヤし通しで「うーわ、ないわ」とずっと煮え切らない気分で見ていた。まっすぐな花菊と絶対童貞の大二郎だったら、やっぱり花菊の方に感情移入して見ちゃうな、そう思っていた。あの最後のシーンを見るまでは。

2018年のキネ旬ベストテンの第二位だった今作。ずっと気になっていたから見れてよかった。ただ、やっぱり、ちょっと通好みの映画だったかな?もっと映画について、ちゃんと勉強しようと思った。