LalaーMukuーMerry

菊とギロチンのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
4.5
昔は女相撲の一座が少なからずあって、昭和30年ころまで全国で興行をして回っていた!そんなこと全く知らなかったから、この映画の舞台そのものに衝撃を受けた。歴史をたどると江戸時代から既にあったとか。(相撲の土俵は女人禁制などと話題になったのは「大相撲」に限ったことなんだな。それって相当狭い了見ではないかぃ?)
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さてこの作品、大正12年(1923)当時の女相撲の一座とそれを取り巻くいろいろな人物が描かれるのだが、ほとんどが全く知らない人たちばかりだったので興味深かった。一つはアナキスト(無政府主義者)の集まり「ギロチン社」の若者たち。もう一つはこういう「危険」人物を取り締まったシベリア出兵の帰還兵たち。すべて実在した人たちをベースに作られた脚本。
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・アナキスト 中浜鉄(=東出昌大)
アナキストは権力集中そのものにNOという人たちなので、平等と自由をどこまでも求めることは共通だが、会派はリーダーの数だけあるような状態で、共産主義者と違って一つに結集するということがなかった。だが時の政府権力にとって、自分たちを否定するという点では共産主義者と同じで、危険思想と見なされて厳しい弾圧の対象となった。

権力の片棒を担ぐ者を殺害すればそれで良しとするお粗末さ、その一方で金持ちから無心して革命活動の資金にあてるってどうなのよ、単に独善的なおバカさんにしか見えないのだが、好意的に見れば、貧富の格差や差別、社会の歪に目がいく正義感と改革の行動力に溢れた熱い若者とも言える。
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・シベリア出兵(1918~22)
シベリア出兵は、ロシア革命で生まれた共産主義国ソ連に対して西欧列強が行った干渉戦争。日本も(領土的思惑もあり)これに参加して多くの兵士を出兵させたが、もともと大義も目的も不明瞭な戦争、泥沼化して何の戦果もないまま撤兵した。(歴史の教科書では一行で終わり)

実はその間、日本軍が現地でやったことはそれは酷い内容でとても書く気になれない、その反動で日本軍もひどい目に遭った。悲惨で非人間的な体験をしたシベリア帰還兵の一部は、その特殊経験をいかし、秘密裏に「主義者」たちの粛清をさせられた。自分たちの手を汚さずにすむように官憲の考えることは恐ろしい。
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関東大震災では混乱に紛れて朝鮮人に対する大虐殺があったとされる。この作品は日本の黒い歴史を濃密に詰め込んでいる。黒歴史の真っただ中の男たちと、そのそばにいた女相撲の力士たち。彼女たちもまた社会から放り出された娘たちだった。暴力亭主から逃げてきた百姓の妻、震災の中虐殺を逃れてきた朝鮮人の遊女・・・だからこそ「強くなりたい」という思い。
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直視するのが難しいような強烈なシーンもあるが、登場人物の魂の叫びをうけとめること。こんな世の中に決して後戻りしてはいけないと、改めて思わせてくれる作品でした。そのために私たちができることとは何なのか? ・・・