ワンコ

菊とギロチンのワンコのレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
4.6
ほとばしる生命力
「テロで世の中を変えられますか?」序盤に投げかけられる問いに、「損得で物事を考えている場合か!」と檄が飛ぶ。
無茶苦茶だ。答えに全くなっていない。

今僕たちの世界で巷に飛び交う、決して交わることのない、主義主張のようだ。
そう、この映画は現在の僕たちの生きる時代にも通じる何かを投げかけている。

女相撲一座とギロチン社。
古い因習や暴力から逃れ生きて行こうとする女たちと、政府に拠らない思想を掲げて理想や自由を求める男たち。

映画は、この対比の中で展開していくが、震災直後の噂で虐殺された朝鮮人の悲劇や、目的の定まらないまま強いられたシベリア行軍の話など、この時代を覆う暗澹たる雰囲気も伝えている。

「女ひとり救えなくて、革命など出来るか!」
鐡は十勝川を助けに行くが、逆に十勝川に命を救われる。
「天皇陛下万歳!」
愛だったのか。
「女ひとり救えなくて、革命など出来るか!」
今度は、大が花菊を救った。

交わることのない、この女たちと男たちの求める理想や自由が、僅かだが交わる瞬間だった気がした。

生命はほとばしる。
この映画に出てくる者たちに明るい未来が待っているわけではないことを僕たちは知っている。何かを変革したわけでもないことも知っている。
しかし、確実に生きたのだ。

この時代より、まだ現代はマシなように思うのは僕だけではないはずだ。
だから、二度と間違いなど犯さぬよう、少しでも考え、主張し、行動するのだというエネルギーを感じる物語だった。

凱旋再公開の舞台挨拶上映で観た。
イッチャナ節を生で聴くことが出来た。
面白かった。
既に鑑賞した人も、もう一度如何ですか。
この訳のわからない今だからこそ、観たらまた楽しめると思います。