菊とギロチンの作品情報・感想・評価 - 25ページ目

「菊とギロチン」に投稿された感想・評価

菊とギロチン
実在した「女相撲興行」の女性力士達と「ギロチン社」のアナキスト達がもしも出会っていたらというフィクションを描いた物語。

関東大震災直後の貧困と閉塞感に包まれた日本
女相撲一座「玉岩興行」には力自慢の女力士や元遊女などワケありの娘達が集い、新人力士の花菊(木竜麻生)も夫の暴力に耐えかねて家出してきた一人であった。
「格差のない平等な社会」を標榜するアナキストグループ「ギロチン社」の中心メンバーである中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)は、仲間の多くを失いながらも東京近郊に辿り着き、巡業で来ていた女相撲に魅せられ彼女達と行動を共にする。
やがて中濱は元遊女の力士 十勝川(韓英恵)と、古田は花菊と惹かれ合っていくのだが…。
自由や強さを欲して足掻き続ける若者達の姿を通し、今この瞬間を全身全霊で生きることの大切さや気高さを描いた作品だ。

189分の長丁場でありながらも、瀬々監督の過去作にして名作『ヘヴンズストーリー』が278分の超大作であったため何ら苦痛に感じない
というか、劇中の熱量に圧倒され過ぎて、あっという間に終わってしまった気がしてならない
構想30年の重みは伊達じゃない。

地震に恐怖する心
震災直後の食料問題
戦争がもたらす数多の弊害
男女格差や男女差別
夢想家スレスレのアナキスト達に、世の中の流れに抗えない弱者達
描かれる時代は大正末期の日本だけど、根底に宿る不安や理不尽さや人の脆さは現代の日本と何も変わっちゃいない

良くも悪くも“平等”である今の世の中、必死に戦わずとも法の名の下に最低限の暮らしは約束されている
高望みさえしなければ、与えられたものや手の届く範囲にあるもので最低限の幸福は手に入れられる
時代の流れや先人達の努力によって改善されてきた“今”がもたらす恩恵に甘えてばかりで、本当の強さや自由を手に入れることに重きを置いていないぼくら現代人
全ての人がそうだとは言わないが、観ていて猛烈に引き込まれてしまうのは、奮い立たされてしまうのは、戦っていない自分を自覚できてしまうからだと思う。

今作に触れるまで、かつて女相撲の一座がいくつも存在していたことをぼくは知らなかった
ちびっこ相撲に女の子が出場している場面に遭遇したことはあっても、成人女性が土俵に立って相撲を取っている姿を目にしたことは無い
偏見や差別のつもりは無いが、物語が始まってからしばらくは奇異の目で彼女達を見つめていた
けど、違っていた
実際に相撲を取る彼女達の姿は、スポーツ観戦している時に感じる胸の高鳴りを感じさせてくれる
対象が何にせよ、本気で何かに打ち込んでいる者の姿は胸を打つ
人の心を動かすだけの魅力を放つ

女相撲の面々に限らず、スクリーンに映る登場人物達は絶えず観客を鼓舞し発破をかけてくる
予告でも流れているセリフだからネタバレでも何でも無いが、「いつかやるなんて言う奴のいつかなんて一生来ない!やるなら今しか無いんだよ!いつだって今しか無いんだ!」という言葉に打ち貫かれた
この言葉に全てが詰まっていた。

過去の過ちを活かすのも、より良き未来を築くのも、いつかでは無く“今”この瞬間でしか無い
誰かがやってくれると人任せにするのもアリだけど、本当に得たいモノが、譲れぬモノがあるのなら、人生の舵は自分自身で握らなくちゃ意味が無い
ぼくがコレを書いている今この時も、あなたがコレを読んでくれている今この時も、絶えず時間は流れ続けている
今この瞬間にしかできないことをぼく達はやれているだろうか
数多くの先延ばしにしていることがあなたにもぼくにもあると思う
某先生の如く「今でしょ!」とか言う必要は無いけれど、明確な締切や期限を設けて取り組めているだろうか
曖昧なまま放置してしまってはいないだろうか
そういった切迫感が、目に見えぬ危機感が、国や世界が良からぬ方向へ進んでいるという実感が、今を生きるぼく達には大いに欠けている

力が無ければ大切なモノは守れない
それは心の強さかもしれないし、腕っぷしの強さかもしれないし、経済的な意味での強さかもしれない
その時代に沿った強さを手に入れる必要がぼく達にはある
そして、手にした力の使い所を見誤ってはならない
人だから間違えるのは仕方が無い
間違えてしまったのなら糧にすれば良いだけ
取り返しのつかないことをやらかしてしまったのなら、一生背負っていくしか無い
そこで諦めて何もかも投げ出せば、全てが無に帰する
天災・人災によって、明日が必ず訪れるとも言い切れない
やり直しの効かない過去に囚われるのでは無く、夢や理想で彩られた未来に惑わされるのでは無く、いつだって自分と隣り合わせにある“今”と対峙して生きていかなくちゃ何も変えられない
見据えるべきは今の自分、目の前の相手、心の内に宿る譲れぬ想い
やるなら今しか無い!

数日も経てば元の自堕落な自分に戻ってしまうのは目に見えているけれど、この作品はキッカケを与えてくれる
きっとあなたの心に強烈な張り手と爆発をお見舞いしてくれると思います
臆することなく、ぜひ劇場でご覧ください。

青春★★★
恋 ★★
エロ★★
サスペンス★★★★
ファンタジー★★
総合評価:A

このレビューはネタバレを含みます

三時間を超える大作。
舞台は大正末期の関東圏だが、戦争の時代の狭間にある僅か十四年間のつかの間の平和の時代、「大正桜に浪漫の嵐」という謳い文句も有ったが、この作品ではそんな気分は微塵も感じられず、地方都市でも軍部と警察が睨み合い、「治安維持」の旗の下に抑圧と排斥が蔓延する不穏な空気一色。

資本家から金を脅し取って遊郭へ...という無政府主義活動家の実態は生々しく、ある種滑稽だが、上記のような現代では考えられない不当な弾圧の連続が示されるため、ワリを食った人々が短絡的な体制の破壊を希求したとしても宜なるかな、という説得力は感じられる。
満足な理非判断基準を備えられるような学識を得られず幼少期より愛国を刷り込まれ、己がちっぽけな身でも大任を果たせるという虚栄心でもって短絡的な暗殺に至る。
思えば、この十数年後に起こる血盟団事件と比べても、イデオロギーの方向性の違いこそあれ、その根は同じではないだろうか。

常に不穏な空気が漂っているからこそ、つかの間の幸福、砂浜で皆で歌い踊っているシーンはとても眩しい。
自分たちを上から押し付ける有象無象の圧力に抗しようと奮戦し、果たせず敗れ、それでも起ち上がる。そんな濃密な決意のこもった一品。
瀬々監督の積年の作ということで初日に見に行った
女のいろいろや若さのいろいろがつらくてかなしくて涙ポロポロした

(どうでもいいけど渋川清彦なに着ててもただのおしゃれに見えてしまうのふるえちゃう)
naoshi

naoshiの感想・評価

4.8
力が入って見入ってしまう女相撲のシーンの力強さ。夢想家と逼迫した現在をサルベージするような役割の女相撲一座の対比が面白い。女子プロレスのことを考えずにはいられなかった。

韓英恵の美しく寄る辺のない様、東出昌大の将来を鼓舞する詩声と現実の格闘、嘉門洋子のどうのいった姿がどれも素晴らしい。木竜麻生のラストの立ち回りは泣く。

これほどまでに中心でありゼロ地点である天皇万歳を顕した場面は見たことがない。あまりの異様さに鳥肌がたった。
g

gの感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

余韻というか爪痕がすごい。
圧倒的な熱量と迫力で、ずっと苦しかった。つまらないからとかじゃなくて、なぜか、早く終われと思ってしまった。でも、終わっても、全然この映画のことが頭から離れない。扱われてる大正時代のこととか、無知すぎて終わってすぐ調べた。

関東大震災、飢饉、戦争、朝鮮人虐殺で、不安で不穏な雰囲気の時代に、革命を起こそうとするアナキストグループの青年たちと、それぞれ色んな思いを抱えた訳ありの女相撲力士たちが出会う。
権力に抗おうと戦う同志として、形は違えど共鳴し影響をうけあっていく。

重たくて痛々しくて本当につらいんだけど
アナキストたちのエネルギーが、なんか、熱い画面にさせていくんだよなー。
まるで革命家のようでその堂々とした振る舞いが大物感すごいんだけど、その実何もしてない鐡。
どこか主義者になりきれなくて、仲間や主義のためには今一歩踏み出せないけど、最後には好きな女の子のために一皮むける大次郎。
朝鮮人が虐殺された時代に生き延びた朝鮮人で、女力士として戦いながらも身体を売ることをやめられない十勝川。
そして百姓の家に生まれ、夫からの暴力に打ち勝つために女力士になった花菊。

全編通して権力とか暴力、理不尽の象徴のような警察や自警団だけど
十勝川を尋問に連れ出した先で鐡たちとつかみ合った時、互いの主張をぶつけ合う
なんのために連れて行かれたのかわからない戦争でなんのためかわからず戦った
敵のような相手にも正義があり
目指す方向は一緒なはずなのに誰かを敵にして楽になりたくて
そんななかで十勝川が叫ぶ天皇陛下、万歳、、、、
この世の色んな歪みの縮図を見てるようで。

敵じゃない、共闘するんだ
弱いやつはずっと弱いまま
強くならないと何も変えられない、、、
すべての人が不安のさなかで
闘い、生きようと必死でもがく姿がこれでもかってくらい映されてる。

東出くんの朗読が刺さりまくる。
漫画の表現にも生かせそうな演出がたくさんあって、面白かった。
ナレーションの入れ方とか。
ただ少し叫びすぎな感はあった。笑
観てて聞いてて、若干シンドい
みんなずっと怒ってたけど
それは映画に懸ける想いの熱さが溢れでたからなのか
あの時代の人はみんなホントにあれくらい、パニクってたのかな?笑

忘れないために点数5。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

1.2
【空飛ぶギロチン空中分解】
日本のソダーバーグこと瀬々敬久監督が、大衆映画を作りつつ、密かに製造していた超大作がいよいよお披露目となった。

『友罪』は今年ぶっちぎりのワーストだったが、これは『菊とギロチン』の為の金稼ぎ映画だ。きっと『菊とギロチン』は傑作に違いないと期待して観たのだが、これが、監督、スタッフの思い入れが強すぎて、空回り空中分解してしまった作品だった。本当に申し訳ない。今年ワーストテン当確です。

本作は3つの点で致命的にキツイ。まずは、演出だ。タイトルシーン、エンドロール間際でドンっと表示される『菊とギロチン』のタイトル。何故そこなんだ!というほどに中途半端。『ホタルノヒカリ』に近いものを感じる。また、主人公花菊ともよが腹に子を宿しながらも訳あり、女相撲で、「強く強く」成長とする場面が、伏線として魅せているのか、それとも説明描写なのかが中途半端だ。この中途半端さが尾を引き、全くもって彼女の成長と決意が画面から滲み出ない。3時間にも渡ってこのような歯がゆいシーンしかないので苦痛であった。

2つ目に、フォーカスがブレブレだ。本作は日本史の知られざる、ギロチン社と女相撲の関係を炙り出す内容だ。貧しさ、抑圧を心身ともに強く鍛えることで、国家や社会に立ち向かう内容だ。しかし、途中から花菊ともよの恋愛話へとスケールがダウンしていく。また、ギロチン社を描きたいのか、女相撲を描きたいのか、右に左に迷いながら演出している感じが強く、結局、肝心な2つのベクトルが持つ共通項《不屈の精神》が効果的に描かれてなかった。

そして、3つ目。本作の登場人物はギャーギャー喚き、慟哭しかしていない。叫んだり、慟哭する演技は、ここぞ!というところで使うからこそ、心に刺さる。しかし、本作では慟哭の安売りを始めてしまうので、ただただ不快で五月蝿いものとなってしまう。花菊ともよを演じた木竜麻生が、海辺で流産し倒れる場面で「痛いよー」と泣き崩れる場面では、あまりの演技の下手さもあり発狂しそうになりました。

まあ、ギロチン社と女相撲が邂逅し、行動を共にする中盤こそそこそこ画面に惹き込まれたが、ディザスターレベルに酷い作品でした。

上映後、余程ヒットして欲しいのか、テアトル新宿最大級の30人登壇お祭騒ぎだったのも個人的に乗れず(行きたくない結婚披露宴に来てしまったかのよう)。

下半期入り、いきなり雲行き怪しい出だしとなりました。

瀬々監督、スタッフ、本当にすまない。今年ワーストDEATH..

ブログ更新しました:
【ネタバレ酷評】『菊とギロチン』もう一つの実写版『この世界の片隅に』が空中分解していた件↓
http://france-chebunbun.com/2018/07/09/post-16041/
lp

lpの感想・評価

3.7
『感染列島』『アントキノイノチ』『ストレイヤーズ・クロニクル』『ヘヴンズ・ストーリー』『64』『最低。』『8年越しの花嫁』『友罪』の瀬々敬久監督の最新作。
当たりハズレの差が大きい瀬々監督だけど、今回の『菊とギロチン』については大ハズレになる心配は観る前から全く無かった。その理由は「長尺×自主映画」で今作が『ヘヴンズ・ストーリー』に重なるから・・・ではなく、『サウダーヂ』や『バンコクナイツ』の脚本を務めた、空族の相澤虎之助が瀬々監督と共に脚本を担当しているから!

そんな訳で「脚本家、相澤虎之助の最新作」という事で、公開初日に早速鑑賞。そして充実の3時間10分を体感!
後半になると少しダレるシーンはあったけれど、ほぼ全編に緊張感が漂い、体感時間は3時間を下回る。

舞台は大正末期。関東大震災直後の日本。夫からの暴力に耐えかね、女相撲の一座に加わる女性を軸に、様々な事情を抱える女相撲一座の面々や、巡業先で出会った「ギロチン社」の青年たちとの交流模様が描かれる。

物語は「理想はあるけれど行動が伴わないギロチン社の若者たち」と「明確な目標は無いけれど、生きるための行動は伴う女相撲の力士たち」の対比がやがて共鳴し、社会派の要素を含む青春ラブストーリーへと着地。

単純に人間ドラマとして巧くまとめられていたけれど、「ギロチン社」という題材が題材なだけに政治的なメッセージが強くなりそうなところを、「抑圧された社会の中で、弱い存在である個人は如何にして生きていくか?」という少し大きな視点からの問い掛けに昇華させた点も巧い。

空族の十八番である「社会情勢に目配せしながらも、地に足が着いたドラマ」に仕上がっていることを鑑みると、相澤虎之助の功績は大きかったように感じる。

相澤虎之助だけではなく、もちろん瀬々監督の手腕も光る。
女相撲の力士役には韓英恵や山田真歩に混ざって、演技経験の浅いキャストも多数起用されているけれど、それでも手堅く安定した人間ドラマを映す時点で大したもの。
また、随所で力量の高さを伺わせる業も光る。特に2回目のタイトルの出し方が完璧で、思わず膝を打つ。

「3時間オーバーの長尺」と聞いただけでも、二の足を踏んでしまう人もいると思いますが、見逃してしまうには勿体無い力作でした。
yuki

yukiの感想・評価

4.0
鳴動により国家の膿をあぶり出した大地。
それと対比される存在として、世界と繋がる間口であり、希望へと開かれた際である海。
ギロチン社と女相撲一座という、権力に抗う2者が混じり合う場として2つの地が入れ替わるように現れる。

国という大義を掲げる中濱が実は個人の欲に忠実なことを知り、
古田も活動家として染まりきれないことを吹っ切るかのように、最後は己のために、己が守りたいもののために動いていく。

とはいえ、後半はややダレる。
前半がめちゃくちゃ面白かっただけに、やっぱり2時間に収められたのでは…?
MA2

MA2の感想・評価

3.8
2018-315
劇場観賞78本目
【舞台挨拶付】
「ロクヨン」(前・後編)「ヘヴンズ・ストーリー」の瀬々監督。
のイメージだったので。189分の長編映画とはいうものの、どれもカットせず伝えたいものがあるんだなと感じました。
監督いわく、構想30年、役者も募った位だったそうですが、よくぞこの作品に参加されたものと拍手を送りました。

最近、伝統を重んじる日本相撲協会は女の子供さえも土俵に乗ることを禁じましたが、かつて女相撲というものが江戸時代からあったのはご存じなんでしょうかねぇ?
関東大震災があり飢饉や朝鮮人虐殺など混沌とした大正末期。この時代って、あまり知らない^^;

女相撲をキワモノではなく、キチッとした興行として描いていて良い。見世物的であっても、やっている女たちは、いろんな事を抱え真剣勝負。スポーツであり伝統芸能でもある。山形発祥らしい。エロはない 笑。

一方、革命を夢見るアナーキストの男たちは青っちろい。いい加減で行き当たりバッタリ。でもどこか憎めない。

この比較がいい。

「女相撲」と「アナーキスト」。なんとも相入れない組み合わせだけど、ともに求めているのは解放であり自由。ただ、それぞれの関わりが相乗効果を出してたかというとそうはなってない。惜しいところ。

キナ臭い匂いが漂う不穏な時代に、時代に流されるのではなく主体的に生きた彼らの姿が、とにかく熱い!

3時間、やや長いけど楽しかったです^_^