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見栄を張るのcinemaiquotのレビュー・感想・評価

見栄を張る(2016年製作の映画)
3.0
ぎこちない演技、稚拙な演出、スクリーンの裏に文字が透けて見えるような脚本、遺体も、遺影すらも演技できておらず、方言の使い方も中途半端、子供の好物のハンバーグを食べるシーンは皿しか映らず、色々足りてなくて、そして要らないところで過剰で、とにかく未熟さの痛々しい作品。
でも、「誰が見ていなくても、人は泣くことができる」、逆説的だがそのことの意味を訴えかけることに成功していて、そこが光っていると思う。
大切な人を亡くしても、自分の夢に惨めにも挫折しそうになっていても、案外人は泣けないものかもしれない。
女優や泣き屋になって、そうして人の前で泣くことくらいたやすい、と考えるものの、泣けない。
それが、泣き屋以外誰も参列者のないある葬儀で、はじめて涙がこぼれる。死者のために、自分のために、涙が流れる。その涙が、上映開始から長いこと待って、やっと美しい。そこから再び余計に感じられるシーンをいくつか挟むものの、ラストの車窓をバックにした涙が、クリシェではあるが心を掴む。冒頭のオーディションで泣けていなかった場面から、そこまでつながった一本の糸が見る者の琴線と共鳴する。
本当に泣くことの難しさと尊さを思う。
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