えんさん

君と100回目の恋のえんさんのレビュー・感想・評価

君と100回目の恋(2017年製作の映画)
2.5
小さい頃からお互いに思いやりながらも、好きな想いをなかなか伝えられない大学生の葵海と幼馴染の陸。7月31日の葵海の誕生日となる日、ライブを終えた、彼女は交通事故に遭遇する。しかし、気づくと彼女は大学の講義室で、うたた寝をしていたのだった。でも、どこかで見た光景。そう、彼女は事故の会う前に戻っていたのだった。戸惑う彼女の前に、普段はクールな陸が驚くべき告白をする。実は、彼女が遭遇する事故から彼女を救うため、全てをかけて陸は何度もタイムリープを繰り返していたのだった。。シンガー・ソングライターのmiwaと「ヒロイン失格」の坂口健太郎がW主演するラブロマンス。監督は「黒崎くんの言いなりになんてならない」の月川翔。

昨年秋くらいから、中高大問わず、若い世代をターゲットにした青春ラブロマンスが数多く作られています。無論、このジャンルは昔からあったのですが、原作となる少女マンガやライトノベルの映画化作品が多く、少し甘ったるい描写に閉口してしまったりすることが多かったのですが、ここのところは原作コミック自体の質も上がってきたこともあって、結構活況なジャンルともいえなくもありません(まぁ、アニメまで入れれば、「君の名は。」のような成功作品もありますし)。本作もヤングコミックの原作があるようなのですが、どちらかというと原作の味というより、昨年末公開で高評価した「ぼくは明日、昨日の君とデートする」のような映画独自の雰囲気というか、味わいが強く出ていて、映画作品としての魅力が詰まっていると思います。話としても、主人公たちが過去に戻るという、「時をかける少女」に似た形でもあるし、配役も同じようなキャラクターが出たりと、どこか見た感もなくはないですが、「君の名は。」、「ぼくは明日〜」と同様に、SFチックな設定と物語がいい雰囲気のまま混じり合っていると思います。

ただ、そのいい映画の雰囲気に、主演のmiwaと坂口健太郎という2人を据えたキャスティングがイマイチだと思います。同じようなミュージシャンが主演で、サポーティングするような形で俳優が加わる形の作品として、2006年公開の「タイヨウのうた」(YUI主演、塚本高史助演)というのが過去にもあったりしますが、やはりミュージシャンが俳優を務めるとなると、演技力というものがイマイチな分、周りを支える役者の出来がどうなのかということにもあります。その意味で、「タイヨウのうた」の塚本高史は演技の巧さというか、ストレートに体当たり演技ができる俳優だけにあって、YUIの演技も映えたし、本領としての歌の魅力がスクリーンに焼き付いた秀作でした。一方、本作の坂口健太郎も決して下手なわけではないですが、本作で初主演作ということもあり、どうしても今までの脇役で光った変化球的な演技が、作品の主を支え、同時にmiwaの演技を支えるというには少し力量不足に感じてしまいました。これを例えば、小栗旬であるとか、佐藤健であるとかが演じたら、作品の印象もだいぶ違ったものになったと思います。miwaのライブシーンもイマイチ弾けなかったのも、少々残念な気分になってしまうところです。

でも、主演2人を支える周りの役者陣には光るものを感じました。特に、同じバンドメンバーを演じた竜星涼、泉澤祐希、葵海の親友を演じた真野恵里菜らは、短い登場時間で印象的な表情を見せ、今後の活躍が楽しみな役者たちだと思います。