カルダモン

ウインド・リバーのカルダモンのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.9
Filmarks試写会にて鑑賞in神楽座。
もう今年はこの映画がベストで良いかというぐらい、文句無しの傑作。
奇しくもアメリカ独立記念日に、アメリカの暗部をえぐるような映画体験になった。

深い雪に閉ざされたネイティブアメリカン居留地"ウインドリバー"。その土地に足を踏み入れた途端に空気が一変するのを肌で感じる。見渡す限りに広がった雪景に張り詰めた空気が恐ろしく、ものの数分ですべてを覆い尽くしてしまう圧倒的な白。たとえライフルを手にしていたとしても生き残れる自信は微塵も湧いてこないだろう。自然の掟の中で娘を失ったハンターの銃声が耳鳴りのように残る。

この土地には運なんてない。
長い間ネイティブアメリカンが受け続けている抑圧は思っている以上に簡単に取り除けないのだろうと、無言の雪原に感じ取った。放っておけばいつかは轍も足跡も死体も、すべてが覆い尽くされて、まるで消しゴムで消されたかのように途絶えてしまう。それでも娘を失ったコナーはずっと、途絶えた轍を追い続ける。

ジェレミーレナー演じるハンターと、エリザベス・オルセン演じるFBI新米女性捜査官の対比はもちろん、脇を固める面々の濃さは目にも嬉しい。
本作が監督デビュー作となるテイラー・シェリダンは「ボーダーライン」や「最後の追跡」の脚本家。この時点で期待値はかなり高く、巧みな語り口で雪山の中へ引きずり込まれる。

鑑賞中、今後この映画は何度も見返すことになると確信。この数年でも指折りのインパクトで、細かい表情や一度では味わい尽くせない言葉の数々が込められている。

物語が深く入り込むに従って、門外漢だったジェーンの表情が変化。
銃声と相まって強く印象に残る。