バルバワ

ウインド・リバーのバルバワのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.5
鑑賞後にばったり仕事終わりの嫁と遭遇、映画をこっそり観たことを引く程怒られるとはつゆとも思わずに鑑賞していました…ドヨヨーン( ´д`)


いやぁ、とても嫌な雰囲気で良い映画でした。あと映画ライターのギンティ小林さんの言うところの"怒らせた相手が実は殺人マシーンでした"の系譜にあたる気がします。

あらすじはワイオミング州のウィンド・リバー保留地の職員のコリーがある日猛獣ピューマ狩りを依頼される。雪山でピューマの足跡を追うと少女の死体を見つける。事件を聞きつけFBI捜査官のジェーンが来てコリーと共に犯人を追っていく…的な感じです。

今作は前述したように嫌な雰囲気が漂っている映画です。まず物語は重いし、降りしきる雪の閉塞感やこの地で起きている邪悪な"なにか"を覆い隠しているような不気味さは半端ないです。それは音響のおどろおどろしさや役者達の徹底して押さえた演技、そして舞台であるウィンド・リバーの底知れない広大さの賜物のように思えます。

アベンジャーズの弓の人(ハムの人みたいですね)で有名なジェレミー・レナー演じる敏腕猛獣ハンターのコリーさんが本当に最高でした。戦闘力が高いのはもちろんですが、彼が内に秘めている悲しみや怒り(『スリー・ビルボード』のミルドレッドも彷彿)がビンビン伝わってきて涙腺を刺激します。あと、ジェレミー・レナーと同じくアベンジャーズのエスパー娘のエリザベス・オルセン演じるFBI捜査官ジェーンも頼りないけど正義感の溢れており素晴らしかったです。ジェーンが涙を流すシーンは彼女の正義感と悔しさが入り交じった名シーンの一つだと思います。
あと被害者の父親のマーティンにも涙腺をやられました。

何より今作の犯人が本当にクソ野郎でした。個人的には『デトロイト』のファッキン警察官フィリップ級に憎たらしくてですね。奴が犯行動機を話すシーンなんてもう…危うくスクリーンに飛び掛かりそうになるくらいの怒りを覚えました。個人的には何かしらの賞をあげたいくらいでした。本当に憎たらしい!

あと今作は名言が多かったです。というかコリーさんが名言製造機でして、被害者の父親の慰めの言葉や親としての後悔の言葉、犯人に対する言葉等の一つ一つが胸に刺さりました。
個人的に一番印象に残ったコリーさんの言葉は世の中に不満があるチンピラに対して「俺は世の中とは戦わない。戦っているのは自分の感情とだ。」と説教台詞です。嫌な事があるとすぐに「世の中が悪いんだぁぁぁウアアアン( ノД`)」と半べそで責任転嫁する私に向けて敏腕ハンターのコリーさんがどたまにブチ込んでくれた気分になりましたよ!アリガトウゴサイマス!(;´д`)

終盤で犯行の一部始終がフラッシュバックされるのですが、本当に胸糞悪い気分になりましてね…散々嫌な気分にさせられてからのコリーさん一騎当千!とくるものだから本当にスカッとしました!

そして、ラストシーンは画面にゴツいおっさん二人しか映っていないのに美しく素敵な終わり方でした。このシーンが何でこんなに素敵なのか、それは今まで悪天候だったウィンド・リバーが晴れ渡っており、白人と先住民族の二人が互いの悲しみに寄り添っているからだと思います。根深い悲しみを胸に秘めつつも明日を生きていこうとする二人に感動しました。最後のクレジットでゾッとさせられましだが…

自分の置かれた環境に不平不満を感じることは仕方ないけれど、その環境に受け入れ懸命に苦しんで生きていく努力は大切だと教えてくれるし自分の環境の有り難みを感じることができる傑作だと思います。
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