「鹿が襲われるのは運が悪いからじゃない。弱いからだ」
現代アメリカの暗部を切り取ることに長けているテイラー・シェリダンが手がけた極寒の地を舞台にしたサスペンス。
最初に実話にインスパイアされたと出てくるけど、ストーリー自体はフィクション。
じゃあ何が実話なのかというと、ウィンドリバーという土地が実際にあり、そこではネイティブアメリカンの女性に対するレイプや殺人事件が異常に多く、そのほとんどが未解決のままということ。
そのことを知ったテイラー・シェリダンが自ら脚本を書き、監督も努めたのが本作。
このテイラー・シェリダンは「ボーダー・ライン」「最後の追跡」の脚本家でもある。
郷に入れば郷に従えと言うように、その土地その土地にはそれぞれの掟や生き方がある。
冒頭の言葉が示す通り、このウィンドリバーという土地では弱いことが罪なのだ。
弱いのであれば、決して子供達から目を離してはいけないのだ。
でもシェリダン監督はそんな環境に置かれた人々を憂いて、警鐘を鳴らすべくこの脚本を書き上げたのだろう。
シェリダン監督は他2作品を見ても分かる通り、重苦しい社会問題を内包しながらも、きちんと映画としての面白さも盛り込める稀有な脚本家。
監督としては今回が初作品らしいけど、そのスタイルは変わっておらず、急に挟み込まれる銃撃戦などで飽きさせない。
それでいて終盤で過去に引き戻される演出や、犯人と思しき野郎とのやり取りなど緊張感溢れるシーンなどは素晴らしい。
ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンという奇しくもアベンジャーズな2人の演技も、この重厚な作品を支えるうえで見逃せない。
あとジョン・バーンサルが出てるのはウォーキング・デッド好きには嬉しいサプライズ。
一見ストレートなサスペンスに見えるけど、その奥底にあるテーマを知るとより深みが増す作品。
オススメです。