うーたん

ウインド・リバーのうーたんのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
5.0
とても見ごたえのある映画でした。
アメリカが世界の人々に一番見られたい場所。その足元には、一番見られたくない現実の問題が放置されてある。

とくにラストの決着が見事でした。
最初に「実話に基づく物語」と出ますが、これが現実の問題であることに恐怖を感じながらも、目をそらさず見届けたい、という気持ちで見続けました。
緊張感が途切れず、現実の重みと怒りや憤りが蓄積されていきました。
そして、それを晴らしてくれる、溜飲下がる「ざまぁ!」な決着。
今後の映画人生の中でも、特に忘れがたい名シーンになると思い、星5をつけました。
『グラントリノ』や『許されざる者』などクリント・イーストウッドの名作のラストのように、静かで深い興奮と感動。胸熱でした。

でも、被害者家族のその後を想像すると、たまらないせつない気持ちになります。
事件が終わったとしても、愛する人を喪った悲しみは消えない。その悲しみと向き合い続けることが、喪った人を心のなかで愛し続けること。主人公の台詞が
胸に響いてくるラストシーン。私は号泣しました。

『ボーダーライン』やネトフリの『最後の追跡』も好きだった脚本家テイラー・シェリダンの監督作。どの作品もリアル路線の社会派サスペンスで面白いですが、本作は文字通り集大成だと思います。
強烈な社会的メッセージを抜きにして、雪原を舞台にしたミステリー単体としてみても、本作は抜群に面白かったです。
事件の真相を明かしていく手順の不自然さが一切ないスムースな運び、何気ないセリフに重要な情報を迷彩する言葉選びの技量、どちらも観客に先を読ませない見事なものでした。さすが脚本家監督ですね。
(アーロン・ソーキン『モリーズゲーム』とともに、今年の映画界は名脚本家の監督作に秀作が生まれる年ですね)

雪山のハンターゆえの職業特性=足跡トレッキングを駆使した推理展開も本作ならではの独自性であり、視覚的スリルを堪能させてくれます。

スムースなセリフ説明と視覚的スリル演出がどちらも機能してるミステリー映画って、なかなかないですよね。

説明臭いセリフや、実はこうでした~みたいな後出し設定に、ガッカリさせられる映画が多いです。

この映画は、本格ミステリーとしても、堂々たる風格をもつ完成度の高い作品だと思いました。
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