イワシ

ウインド・リバーのイワシのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
3.3
途中で出現する斜面の存在に『ピアニストを撃て』のそれを連想するが、あの映画のような斜めの下降線を描く運動はなく、むしろ停止へ至る重い足取りをじっと見つめるジェレミー・レナーの様子が印象に残る。そこに留まり見つめるという行為が、この映画の作劇の主題となっている。

エリザベス・オルセンは被害者遺族の聴取の場で正視に耐え難い光景を見て視線を逸らすことから未熟な印象を与えるが、防寒着を着たオルセンの姿を見たレナーもまた視線を外す。二人の関係性が深まる場面でも視線は互いから外されるが、それは自身の感情に眼を向けることでもある。エリザベス・オルセンが鏡を見つめるショットは説明的だが。

プロットを聞いたときはニコラス・レイ『危険な場所で』を連想したのだが、クライマックスの空間が似ているにも関わらず『危険な場所で』の犯人のように滑落することはない。地平線まで続く白い景色を歩かせることがテイラー・シェリダンにとって重要な要素だったのだろう。
イワシ

イワシ