真冬の西部劇と社会派サスペンスミステリーな映画。
少し前から目をつけていたのにあれよあれよという間に行き損ねて、ようやく滑り込みで観に行けたけども、こんなクソ暑い日にクソ寒そうな映画を観るというのも何だか変な感じ。
アメリカ中西部に位置するワイオミング州、さらにその中央に位置するネイティブアメリカン保留地の”ウィンド・リバー”。
吹雪が吹きすさぶ真冬の荒野で1人の少女の死体が見つかった。
発見者である野生生物局のハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)はその少女が靴を履くこともなく何かから必死に逃げてきたこと、そして何より3年前に亡くなった娘の親友だったナタリー・
ハンソン(ケルシー・アスビル)だと気づく。
捜査のためにFBIから捜査官が派遣されるが、やってきたジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)はまだ新人の捜査官でとても頼りない。
エミリーの足跡ほどしか手掛かりがないことに加えて、この過酷な環境の中ではジェーンだけでは捜査が進むはずもなく、コリーに協力を仰ぐことになるが…
「ネイティブアメリカン保留地」という、おそらく多くの日本人にはゆかりのないワード、例に漏れず自分もこの映画で初めて詳細な歴史とかを知ったけども。
監督兼脚本のテイラー・シェリダンは「ボーダーライン」「最後の追跡」と、気の重くなるようなテーマを持ってくることが得意なようだけど、今回もやっぱり暗いテーマだった。
保留地という問題を通してアメリカにもまだこんな問題があるのかと思い知らされたが、そこからそこで生き続ける人たちの「強さ」こそがこのストーリーの本質だと思う。
まあ今さらあからさまにお涙頂戴な話をされてもという感じなので、この路線で大満足なのですが。
犯人捜しの部分は特別複雑というわけではないが、シンプルだからこそジェレミー・レナーやエリザベス・オルセンの演技と、緊迫感のある演出がものをいう。
犯人を追う姿はまさにハンターの如き厳しさと冷酷さを見せるが、娘を思うときにはこらえきれずに涙をこぼすコリーにはとても人間味がある。
こういうところを見ているとこの映画は西部劇に近いものなんだと思う。
「ボーダーライン」の高速道路のシーンでもそうだったけど、銃撃戦のシーンには尋常じゃないほどの緊張感がある。
今回は主人公がハンターなので猟銃だけど、それでも人1人が宙に舞うほどの威力があるのかと思って驚いた。
それを「ヘンゼルとグレーテル」で「そして殺す」と語っていたジェレミー・レナーが扱うのだから説得力満点。
ジェレミー・レナー×雪山×スナイパーライフルといえば「ボーン・レガシー」しか頭の中になかったけど、無事この映画で上書きできそう、ボーン・レガシーはそこまで面白くなかったし。
