Yoko

ウインド・リバーのYokoのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.5
アメリカ中西部、一面雪と山で覆われた保留地”ウインド・リバー”。
18歳の少女の凍死体は衣服は着用しているも、なぜか裸足で発見された…。

雪と静寂だけが残された土地でいかにして生きる希望を見失わずに生きていけるのか。
この希望の必要性はどの場所においても通じるテーマだが、運が通用しないこの雪山世界では殊この希望の喪失は一大事となる。
今作の真っ白な雪景色の役割は、運などの外的要素を削いだ等身大の自分がそのまま切り取られて映し出されるスクリーンなのかもしれない。
そのスクリーンに映った自分をまっすぐ見据え受け入れられるか、あるいはその姿が堪え目を逸らしドラッグやレイプといった一時の欲望に溺れてしまうか。
娯楽という娯楽が埋もれてしまったこの雪山世界では特にそうだろうが、別にここに限らずすべからくこの世は辛い世界。
しかしそんな世界でも選択しているのは他でもない自分。
よっぽどの事情がなければ大半の人々の人生はそうであるだろうし、逆にその選択の自覚がある人はそう多くはないだろう。
自分の悲劇が「誰か」の掌の上で踊らされているものだと考えれば、自分は悲劇のヒロインなのだという「設定」が出来上がる。
自らを受け入れられず「誰か」という世界を相手に恨み節。
「設定」に逃げ込むことで悲劇は終わらず、もはやその「設定」があるからこそ悲劇が続く。
そうした終わらない悲劇に決着をつけるためには、自分の周りの辛い世界を嘆くのではなく、いかにその辛い世界に立ち向かっている自分と向き合えるか。
サスペンスとしての臨場感に加えてこれほどの人間ドラマを添えられるとは、いやはや天晴です。
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