YokoGoto

ウインド・リバーのYokoGotoのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.5
<絶対、映画好きが好きな映画。やりきれない米国の闇>

テイラー・シェリダン氏の脚本といえば、『ボーダーライン』。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品で、テイラー・シェリダンが脚本を書いた作品。この見事な組み合わせで生み出した、あの作品も、本当に秀逸な作品であった。

本作、『ウインド・リバー』は、『ボーダーライン』では脚本をつとめたテイラー・シェリダンが、今度は監督としてメガホンを握った作品。カンヌ映画祭では、ある視点部門で監督賞を受賞した。

足跡も何もない、真っ白なパウダースノーに飛び散る、真っ赤な血の跡。
ひきずるような足跡のその先に残された、若き少女の遺体。

冒頭数分では、こんな強烈なサスペンスシーンを、美しい映像美で見せられる。

否が応でも、映画好きならその先を見たくなる。使い古された言葉ではあるが「つかみはOK!」。そんな言葉で、密かにうなってしまう。

それからは、一気に、サスペンスに引き込まれながらも、『ウインド・リバー』という地区に住む、先住民(ネイティブインディアン)達が置かれた状況に直面していく。

静かなシーンで繰り広げられる、静かな会話。すべてに意味があり均衡がとれている。

物語が進むにしたがい、どんどん、なんとも言えないやりきれない気持ちに駆られていく。この気持ちを抱えながら、このサスペンスの謎を解きたい解きたいと、その映画の世界に吸い込まれていく、そんな作品であった。

実に、社会派サスペンスという単純な言葉では収まらない、価値ある問題の切り取り方。そんな、テイラー・シェリダ監督の映画づくりの美味さには、久しぶりに感動してしまった。

これまで、なかなか切り取られなかったアメリカの闇。
それを、サスペンスを交えながら描ききる所に、やはり、映画の素晴らしさがあると思う。

本作は、実話を元にしているのだから、決してエンターテイメントではない。エンタメではないけれど、しっかりと魅せる映画にすることで、より多くの人々に、この映画に描かれた社会問題を知らしめる事ができる。この絶妙なバランスこそ、映画監督の力が現れる所だと思う。

映画好きにはたまらない作品。おすすめです。
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