風来坊

ウインド・リバーの風来坊のレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.5
家畜を守る為の狩猟の最中に事件に巻き込まれる感じがナチュラルで良いですね。寒々しい大地に殺伐とした殺人事件。北欧ミステリーのような雰囲気も良い。

ウィンドリバーという複雑な土地と、被害者を取り巻く複雑な環境が事件を難解な物にしていて興味深い。こういう土地柄じゃなければスピード解決もあったのかも知れないと思うと歯がゆい。

リストカットのシーンは合点がいいかない。何時もの事で諦めているのかも知れませんが誰か止めろよと思う。最初から主人公の気持ちは固まっていて躊躇がないのもなんだかなあ…。

事実は小説より奇なり。これが実話とは…重いですね…。でも、これはカンヌ国際映画祭である視点部門賞と監督賞を受賞したのは納得の映画。脚本家としては「ボーダーライン」などで既に実績があるテイラー・シェリダンさん、重厚で丁寧な人物描写はこれが映画監督デビュー作とは思えないですね。

過去の深い心の傷から人生を達観していて、苦悩に揺れる主人公を深く演じているジェレミー・レナーさんもスゴく良く男優賞を受賞しても不思議でないのですが、この年は「ビューティフルデイ」のホアキン・フェニックスが抜群の演技と存在感で受賞しているので運が悪かったですね。

部族警察暑の署長役の俳優さんもバイプレイヤーとして色々な作品で見掛けますが、本作では一見冷たそうで温かさを持った署長を好演しています。個人的には「ダイハード3」の刑事役の印象が強いです。エリザベス・オルセンさんも経験不足ながらも情熱を持って事件に対峙する女性捜査官を好演していました。

上述したように監督は「ボーダーライン」の脚本家なので人の闇とやるせない正義、理不尽な世界でも戦い続けるというテーマは似ていますね。人生の苦味、人の闇を綺麗な雪山との対比で重厚に描き出しています。

終わって見ればこの土地柄が事件を複雑にしただけで、やっぱりそう言う事かとそれほど衝撃は感じませんでした。ネイティブアメリカンの女性の失踪に関する統計調査が存在しない方が衝撃でした。アメリカの闇を感じますね。

設定が練られていて人間ドラマとしても、ミステリーとしても良く出来た映画で非常に良い映画でした。
風来坊

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