とても素晴らしい作品。
単なるクライムサスペンスだけでなく、色んなものが幾重にも重なった作品でした。
特に感じたのが人の心のあり方、強さというのでしょうか。冒頭で見つかったの死体の印象が、はじめと後とでは大きく変わってしまいます。
雪原のど真ん中で裸足のままで死んでいた若いネイティブアメリカンの女性。はじめはそれをミステリーの導入としての死体としか見ていなかった自分がいます。
しかし、この作品を観終えて改めて雪原で死んだ女性のことを考えると、今まで自分に見えなかった色んなものが違った形で見えてくるのです。
アメリカの闇、社会の仕組み、人の醜さ、そして生きようとする魂の尊厳…
ハンターであるコリン・ランバードは、足跡やスノーバイクの轍を辿りながら犯人を追跡し、事の真相に迫まります。
一方、単身派遣されたFBI捜査官のジェーン・バナー。彼女はナメたような薄着姿でこの雪原での調査に臨もうとします。
そこで一つの構図が見えてきます。その土地のことなら何でも分かる地元民。それと、それまでその土地の名前すら知らなかったジェーン。もちろん僕たちも後者に含まれます。
前者は地元では誰もが知る、ネイティブアメリカンの女性たちが失踪し続ける現実を示しており、後者はこの事件を通してその現実を知る無知を示します。
雪のように降り積もる地元民の悲しみ。
その悲しみも無残な現実も全てを目隠しするような白い雪。
その構図はまるでこの白い雪原のように、厳しく、冷たく、沈黙を続けます。