カツマ

めぐりあう日のカツマのレビュー・感想・評価

めぐりあう日(2015年製作の映画)
3.9
フランス映画界の新たなる才能ウニー・ルコント監督の長編第2作。韓国からフランスへと孤児に出された監督自身の人生が投影された作品で、登場人物の心の機微に非常にパーソナルな一面を感じさせる。養子に出された主人公が、実母を探すために生まれ故郷のダンケルクへと渡る。何故彼女がそこまで実母を探すことに拘ったのかは、最後のシーンのさりげない言葉に集約される。原題は『あなたが狂おしいほどに愛されることを私は願っている』。それは親から子へと受け継がれる愛の物語。

理学療法士のエリザは幼い頃に養子に出され、実母が誰なのかは分からないままに大人になった。実母を探すため彼女は息子のノエを連れ、生まれ故郷のダンケルクへと移住する。そこでも有益な情報は掴めないままだったが、ある日エリザの診療所にノエの学校職員でもあるアネットが患者としてやってくる。アネットは何故か息子のノエを気にかけ、またエリザにも何かと好意的だ。次第にアネットはエリザが自分がかつて産んだ娘だと気付きはじめることになるのだが・・。

ダンケルクという港町の風景そのままにこの物語はとても静かで、ピアノの音色のように静寂に紛れ込む。少しずつお互いの存在に気付いていく母子の感情の変化を丁寧に掬い取り、温もり溢れるラストシーンを用意してくれた。水色の景色がいつまでも優しい余韻となって残る作品。静かなる感動ドラマを好む人におすすめです。
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