Yoshishun

帝一の國のYoshishunのレビュー・感想・評価

帝一の國(2017年製作の映画)
4.3
"打倒・権威主義!"

映画ファンの間でも絶賛の嵐だった人気漫画の実写映画化。
公開当時、予告編だけでは全く面白そうに見えなかったが、まさかの2017年公開の実写映画としては一二を争う完成度だったと思う。

妙にハイカラな制服や校風の数々、そしてバチバチに漫画っぽい菅田将暉の語りに最初はノれるか心配だったが、この奇妙な世界観に徐々に虜になっていく。菅田将暉はまさに現代政治家の体現化で、暴力ではなく頭脳で他人を蹴落とし、頂点(=生徒会長)への最短経路を探り当てていく。その過程で彼が対峙する天才達とのやり取りに不覚にも笑ってしまった。

イケメンが演じる個性派キャラクター達も魅力的。帝一は勿論、帝一の腐れ縁の菊磨、好い人すぎる弾、裏がありそうにしかみえない氷室、帝一にぞっこんの光明、冷静沈着な次期生徒会長候補の億人と全員キャラが濃い。清楚系お嬢様キャラと思っていた美美子が菊磨にハイキックをかますアグレッシブさも素晴らしかった。

内容はよくある生徒会選のようで、現代選挙の縮図とも取れる。国民の意見を尊重するはずの民主主義が、権威主義の糧となり、国民のための選挙から誰かを蹴落とすための選挙に変貌する。そんな民意も糞もない誰のためかもわからない選挙に痛烈な一撃を投じる。コメディとして笑い盛り沢山な作風ながらも、痛烈な選挙批判にも読み取れる。

肝心の選挙戦が少し駆け足気味であったり、校則で恋愛は禁止されてるはずなのに終盤帝一と美美子はずっと行動を共にしていたりと残念な部分はある。ただし、それは些細な問題で一風変わった選挙エンタメとして申し分ない面白さ。これは続篇が観たい!
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