えにし

ダムネーション 天罰のえにしのレビュー・感想・評価

ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)
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地面を叩きつける激しい雨がつくる靄、蒸したタバコの煙、バーカウンターからたちのぼる湯気。不定形なものに視界を遮られたり、その不定形なものが消えて見えてくる世界がある。「煙は人の魂を支配する」みたいなせりふもあった。なんだか人生みたい。壁の渇いたところの色が雨に濡れて濃くなっていく様子や、そもそも「雨」「水」そのものに備わっているものとしての流動性も映像の中で前に出てきていた。そういった「不定形」「流動的」なものが、変わり続けていくこと、すなわち「生」を浮き上がらせるものとして機能していた気がする。男女が面と向かって腰や肩に手を回しながら踊るさまは人間の「個」の境界をあいまいにし、そのダンスの身体性の延長としてのセックスは「性」が混ざり合う。まさしく「不定形」で「流動的」なものとしてエロス=「生」を喚起していた。抽象的なことなので思ったことを書き起こせているかいまいち自信がないが、結局はスピッツの『愛のことば』の"今 煙の中で 溶け合いながら 探しつづける愛のことば"ってこういうことなんじゃないか、と言いたかった。

初タル・ベーラだった。ショットと長回しの人だとは聞いていたけど、これは聞きしに勝るほどだな、という感じだった。とても好きだったけど、家出る時間ミスって冒頭5分くらいみのがしたので星なし。
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