千年女優

ビルマの竪琴 総集編の千年女優のレビュー・感想・評価

ビルマの竪琴 総集編(1956年製作の映画)
4.0
日本軍が制圧するも連合軍の反撃に遭って決死のインパール作戦も及ばず敗色濃厚のビルマ。音楽学校出の井上率いる隊において得意の竪琴で味方に情報を伝える上等兵で辿り着いた村で停戦を知った水島。降伏認めぬ小隊の説得に向かったところで攻撃に巻き込まれて失踪した彼の行く末とその身を案じる井上隊の様子を描いた戦争映画です。

戦前にアニメーターから実写映画監督へと転身して東宝で活動していた市川崑が友人のプロデューサー高木雅行が獲得した映画化権に惹かれて日活移籍して制作した竹山道雄の同名小説を原作とする1956年公開作品で、当初ビルマ撮影が叶わず二部作となったものの公開されれば高い評価を集めてオスカー外国語映画賞にノミネートされました。

後にセルフリメイクもなされたように市川自身は納得いかなかったもののモノクロが醸す重厚感が原作の児童向け故の説教臭さや甘さを抑えて切実な戦争当事者の叙事録としています。血なまぐさい戦いの中で人を癒す美しい旋律。そうであっても決して消えぬ傷の跡。そうした中で生まれた固い決意。アンサンブルが心に切なく響く一作です。
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