青二歳

ハッピーバースデー 命かがやく瞬間の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

…“道徳の授業で観させられそう系”。母娘の関係がリアル過ぎて泣ける…萩尾望都“イグアナの娘”からファンタジー要素を引いたものなんですが、このプロットこわい。何がこわいって虐待の連鎖が鍵となってる点がキツイ…
【おはなし】母に“産まなきゃ良かった”と言われ喋ることが出来なくなってしまう妹。どう頑張っても話すことが出来ず、母からはなお疎まれ、学校へも行かせてもらえなくなってしまう。しかし兄の計らいにより福島の母方の祖父母の元へ預かってもらう事ができた。祖父母から無償の愛を受け、田舎の自然に触れていく中で、妹はようやく声を取り戻す。
その後は友人を得て、家族以外のコミュニティを作っていき、心の平穏を獲得していく妹。一方、変化した妹に感化された兄もまた、エリート詰め込み教育のストレスから逃れ、新しい価値観を見出すことに挑んでいく…
母との関係は難しいものを残しつつも、再構築への希望が伺えるラストとなっている。

虐待がテーマのアニメと紹介されますが、暴力の虐待などではなく。精神的な虐待というか…子供を愛玩として扱い、一方で子供を支配下に置く親を描いています。正確に言えばどちらも支配なのですが、妹は無碍にされる/無視される方です。
“イグアナの娘”ですね。この母親が、実は自分も過去に同じような扱いを父母から受けていたことが判明します。連鎖してしまう虐待。祖父母も孫を迎えて過ごす中で、初めて自分たちが同じ事をしてしまった事に気づきます。

良いプロットなんだけど、ただ…“道徳の授業で使われそう系”らしく、引き算をしないんだな…これも。虐待、無視、支配、搾取…母子の関係だけなら良作にまとまるのに、養護学級の障害児童との友情やいじめ問題まで盛り込むのはちょっとバランス悪い。主人公の少女が前向きに変わることができたことを表す場面だから、一応連続性はあるのだけど、やはりぎごちない印象。もっとドメスティックなドラマにした方が良い。後半になるとお兄ちゃんのエリート教育への反発とかもあるし(90年代って詰め込み教育批判が流行ってた気がする)、家庭内だけで盛りだくさん。しかし本当に引き算しないんですよねぇ…

テーマがとっ散らかっているけれど、メインテーマは“虐待の連鎖”でしょうか。同級生のいじめっ子も“虐待の連鎖”の犠牲者でしたし。何より母親がその連鎖のキーパーソンなのだから、養護学級やいじめ問題は省いて、母親を後半の主人公にしたら傑作になったと思う。彼女の回復をもっと丁寧に描いて欲しいところ。それでこそ虐待の連鎖を断ち切った主人公の少女の強さが光るのに。
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