鹿江光

フィッシュマンの涙の鹿江光のレビュー・感想・評価

フィッシュマンの涙(2015年製作の映画)
3.2
≪65点≫:魚になったら、どうやって泳ごうか。
奇妙な世界は時に現実よりも現実そのものを映し出す。遥か未来のSFが現代を映す鏡であるように、フィッシュマンもまた現実離れした設定の中に、他人事とは思えない今を生きる人間たちのドラマが描かれている。
冒頭からコメディ色が強く、お菓子でも摘まみながら軽く観れるような内容かと思いきや、徐々に雲行きは怪しくなり…気付けば社会風刺というか、現実の闇めいたものが押し寄せ、それぞれの苦悩の中で生きる“人間”たちの姿が浮かび上がってくる。でも最後の方はなんだか優しい空気を感じ、穏やかな心で明日も生きようと思えてくる。まさに“ひとりの魚人間”が我々に与えた「衝撃」と「波乱」と「笑い」に観客も心動かされ、彼の存在を想起する。今どこで何をしているのだろうかと、実際に現実に存在していたかのように、彼に想いを馳せる。
なにはともあれ、自分が泳げる範囲の人生から、まずは頑張って生きよう。そんな感じ。なんとも不思議で、優しいエールを受け取った作品だった。
鹿江光

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