ダウンセット

田園に死すのダウンセットのレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
4.2
寺山修司の映像作品群の中ではポピュラーな作品であろう本作。
閉鎖的な生活環境、束縛の域を超えた母という存在からの脱却。過去という記憶は捏造され、更新される。ならば自らの手でエントロピーのトリガーを引き、拡大を加速させようという寺山修司の考察は自己と記憶は切り離したくても切り離せない表裏一体な構造である事に辿り着く。ならば常に過去は作り変えることが可能であると同時に未来は思い出せる事も可能だと。そんなとこに座って、お前らは何を見てるんだ!動け!過去を創造しろ!と訴える。
扉の向こう側は故郷という荒野が広がり、救いを求めて見た景色は、母を映画の中ですら殺す事が出来なかった寺山修司の思い出した未来の景色が、新宿駅西口の雑踏だったとしたら、そこに救いはあったのだろうか。