あい

淵に立つのあいのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.8
危ういバランスで成り立っている日常から、それが崩壊していく過程、そして全ての登場人物が狂気を露わにする、あらゆるシーンにその不穏さがにじみ出る。
「普通」の中に潜む人間の狂気をまるでホラーのように、さりげなくも隅から隅まで不快に描ける力量に惚れ惚れ、、、黒沢清だけだと思ってた。
そして役者さん、みんな素晴らしい演技。

気付いているけど知らない振りをしていられるうちは、危うさを楽しんでられるうちはまだいい。
ただ、何かが起こってから「知らなかった」では済まされない。「気付いていたはずなのに」はずっとつきまとう罪悪感になる。
何かが起こらなければ、きっとあの3人はいつまでも「家族」のようなものでいられたのだと思う。そのようにして、色んなものを見て見ぬ振りして、自分の、他人の狂気を何とか隠してやり過ごし、日々どうにか紡いでいる人間関係が、この世はほとんどなのかもしれないな。
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