踊る猫

淵に立つの踊る猫のレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.4
重厚な映画だ。二時間という時間が三時間に感じられた。良く言えばそれだけ丁寧に、細かい部分に至るまで演出を施された映画ということになる。悪く言えばサスペンスとしてはテンポが些か悪い印象を受ける。町工場の一家を襲った悲劇というスケールとしてはミニマルなストーリーなのにそんな印象を受けるのは、俳優陣の演技の頑張りに依るところも大きいのだろう。突如豹変する浅野忠信氏を始めとして、どの俳優の演技もスキがない。また、この監督の特有の色彩感覚もまた映画の各所に施された色使い(特に「赤」の多用)に遺憾なく発揮されている。前半はただの凡庸な夫にしか見えなかった古舘寛治氏が後半に人間味を増すあたり、あるいは逆に貞淑な妻でしかなかった筒井真理子氏がエゴを剥き出しにするあたり、デーハーな演技というわけではないのに魅せる。このような世界を作れるのは確かにこの監督の才能の賜物だろう。こちらを唸らせる作品だ。
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