三郎丸

淵に立つの三郎丸のレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
3.8
カンヌ国際映画祭で、ある視点部門の審査員賞を受賞した作品ということで鑑賞!

本作、基本的に鑑賞者に
「各々、見て想像してね」
な部分がありまくって、若干断言出来ない部分もあるのですが、
【人間の日常に潜む闇】
が、淡々と描いており、とても恐ろしい作品です。
登場人物それぞれが場面によって異なる顔を見せますが、何が正しくて何が悪いのか、判断するのが難しいです。
鑑賞者で三人三様の見方、登場人物それぞれを客観的に捉えれば何通りもの解釈ができる、説明がないことが起因で多面性を持った作品です。

主人公は浅野忠信さん演じる八坂なのでしょうが、八坂が軸であるような進行ではなく、古舘寛治さん演じる、八坂の昔なじみの金物工場を経営する鈴岡、筒井真理子さん演じる鈴岡の妻、章江、その娘、蛍という一家の物語に、突然に影のようにまとわりつく存在とでもいうのでしょうか?

本作は、
【赤色】
が事件の起こる前触れを暗示する色になっています。
赤いTシャツ、赤い色の花、赤いドレス、赤いリュック…
鑑賞者は、その都度ガッカリさせられるのですが(笑)

八坂という男は人間の姿をした、人間ではない何か別の存在のようにも見えます。
因果応報のシンボルとでもいうような?
一家と短期間であれガッツリ絡んでますので
【存在していた】
に間違いはないのですが…
その八坂を本作のキモである「行動」に駆り立てたものは何なのか?
復讐心?
自尊心?
性的な衝動?
衝動的な怒り?
解釈は観る人に委ねるしかありません。
このあたりの捉え方が非常に難しさを覚えました。
実際、八坂が娘の蛍に重度の障害を負わせたか否かもボンヤリですからね…(八坂が現場から逃走を計ったのでワタシはやりやがったと捉えましたが)

本作、イチバンの見所としては、章江役の筒井真理子さんの演技がすごかったです。
物語のスタート時点と結末までの変化が、心理的なものだけでなく、外見からもはっきり見て取れるようになっていました。(さり気デニーロアプローチ入ってます!)
登場人物中で一番、彼女の心の葛藤が苦しいものだと思えましたし、作品後半は見ていられないほどにツライ…

鈴岡が築いたつもりの家族は、鈴岡にとって無意識だったかも知れませんが、はじめから絆など無かったようにも思えます。家族という形を成していただけで、繰り返し出てくる食事のシーンで感じました。
序盤なんか飯食うだけの為にそこに居る感ハンパなかったですからね…
結果的に、八坂によって家族の内部をかき乱されるに従い、鈴岡が家族を意識せずにはいられなくなっていき、家族の繋がりが構築されるという寂しい流れです。

八坂が、章江に対して、
「家族に迷惑をかけない」
と言いながらも八坂の行動で気になった部分があり、
・居候の分際で、早食いで家族に配慮せず
・寝ている時に部屋の電気を消すなと言う
・風呂上がりに家族の妻と子供の前で半裸で登場
・元殺人者と章江に赤裸々に告白
・章江に余裕で迫る
・突然キレる
と、なかなかにご迷惑な同居生活に抵抗のある人間です!
色々と大丈夫!?なヤローでした。

作品中、謎のままになってしまったことがいろいろあります。
八坂という存在は結局なんなのか?
彼はあの出来事の後の鈴岡家の様子を把握していたのか?
どのような解釈もできるのですが、一番の謎は胸くその悪い結末です…
結果的に、
【淵に立たれ】
結末を迎えるのですが、それをどう見るか(果たして誰と誰が…?)で、鈴岡と八坂の関係(この先も続くであろう因縁)に対する見方も違ってくるのかなと思います。

家族の存在が日常生活に当たり前になってる方や、人を信じ過ぎている方に特にオススメです!
鑑賞後、イヤ~な部分が心に残りますが、こういうジャンルの作品は作っていくべきだと思います。