ぬーたん

淵に立つのぬーたんのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
2.5
カンヌで受賞したし評価も高いようだけど、私はダメだった。
ファンの方はレビュー読まないでね!

観なきゃ良かったと久し振りに思った後味の悪さ。
ホラー映画?
後味が悪いと言えば『セブン』がトップだが、セブンの後味の悪さはラストだけでストーリーは良く出来ていたし、犯人や刑事2人のキャラもキチンと伝わり脚本は良かったと思う。
しかし、今作はどうだろう?

俳優は良かった。
町工場を営む利雄を古舘寛治、50歳。
あまり邦画は観ないから知らないけど、あれ?何処かで観た顔と思ったら『南極料理人』の主任!
平凡で地味、何処にでも居そうな容貌がいい。
おどおどしたような声もいい。気の弱さが分かる。
町工場のオヤジには線が細い感じだけど、飄々とした雰囲気が良かった。
静かで、言葉は少ないのに、表情や落ち着きのなさや歩き方とか、細かいところで感情をキッチリ表現している。余計なセリフは要らない職人というオーラを感じる。
これぞ役者、という感じがした。
その妻、章江を筒井真理子、57歳。若い!
良くドラマで観るけど、実は名前を知らなかった。
『花子とアン』の女中役がインパクトあった。
今作では8年後の時間の経過を13㎏の増量で挑んだ。
その期間はたった3週間。まあ、太るのは割合簡単な様だけど、また元に戻っているから大したものだ。
今作では、この筒井さんの演技が一番の魅力だった。
こちらも言葉は少ない。
でも、女としての気持ちの変化の表現が上手い!
平凡で古旦那との生活の中に、あんなイケメンが同居して、熱いまなざしで見つめられたら、そりゃそうなるでしょ!
プロテスタントだし罪悪感、でもトキメキを抑えられない、という心の葛藤を演じて、リアリティーがあった。
妻として母としての顔、スッと見せる色気。
ゾクゾクする演技だった。
更に8年後は、増量ですっかり体型も変わり、後ろ姿は疲れていて、この方もセリフなくても感情を十分に伝える実力があり、感心した。
利雄の知り合いで住み込みで仕事をすることになる八坂を浅野忠信、44歳。
礼儀正しく、穏やかに見える。
ムショ帰りを思わせる、灯りと早食い。ちょっとわざとらしい演出。
2人の名演技の前では、いささか味気のない演技にも見える。
下手なのか、脚本なのか分からないが、キャラを掴めぬままだった。
その何を考えているか分からない、というのが恐ろしさでもあるけども。
工場に勤務していた設楽(三浦貴大・何でキミが出た?)の後任の孝司に大賀、25歳。
この方も初めて観る。と思ったけど、朝ドラ始め出演作たくさん!
多分覚えていないだけか?地味だしね。
なかなかの好演だったが、この役自体が、あまりにも出来過ぎている。
写真パラリとかもう、クサ過ぎるし。
最後のセリフも何だったんだろう?

あまり数は観てないが、最近の邦画はこんな感じが多く、こういう作品を日本人は求めているのだろうか?
全編暗くどんよりとしている。
何やらフランス映画を意識したような色使い(今作は白と赤)
間が長く、セリフで語らない。
象徴的なモノや形、その繰り返しで心情を表す。
音楽の使い方が不気味。
観客に答えを委ねる、最後まで回答のないテスト。
救いがない、不幸の積み重ね。

宗教や障がいや神経症を入れるがそのどれもが中途半端で、結局は物語を構築するためのパーツに過ぎなかったことが分かる。
罪と罰?
贖罪は己でするべきで、ましてや子が親の罪を贖うなんて不条理なことはない。
もう一度観たら、評価が上がるかもしれないが、いかんせん、もう観る気は起きないだろう。
子を持つ親としては、辛過ぎて、腹立たしいから。

☆どうだ?という監督のドヤ顔が見えるわ!と書こうとして、あ、この監督の顔を知らないや(名前も知らん)と思い、調べてみた。
ちょうどインタビューが載っていてその中のこの話に驚いた。

『浅野さんには、とにかく「悪を演じないでほしい」とお願いしました。レクター博士(映画『ハンニバル』の殺人鬼)のような悪のヒーローにはしてほしくないので、基本的には夫婦とは普通にコミュニケーションをとってほしいし、状況に応じて笑ったりもしてほしい、笑顔も怖い面も両方が見える人物にしたかったんです。』
ちょ、ちょ!
トマス・ハリスが書いたレクター博士。
アンソニー・ホプキンスが演じたレクター博士。
本当にご存知か?
レクター博士を引き合いに持って来るのは…😤
ぬーたん

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