Cisaraghi

50のCisaraghiのレビュー・感想・評価

50(2015年製作の映画)
-
ナイジェリア最大にして西アフリカ最大の大都市ラゴスが見たい、というのがこの映画を観ようと思った最大の動機。ナイジェリアについて知っていることは少ない。アフリカにおけるだいたいの位置、人口2億人近い、英国を話す、ボコハラム、映画産業が盛ん、サッカー、そのくらい。

ドラマも映画も見てないのに僭越だが、これはラゴス版『セックス・アンド・ザ・シティ』みたいな映画なんじゃないだろうか。主役はラゴスのキャリアを持50歳の女性4人。いくつかの島と大陸部とから成り、街の中枢機能が島に集中しているところなど、ラゴスの街の成り立ちもニューヨークとよく似ている。
 
ラゴスの遠景俯瞰図が何度も映る。かなり都会。ビルが林立し、車道が縦横に走り、一見するとなかなかインフラの整った普通の近代都市のように見えるが、拡大すると足元には大規模なスラムが広がっているらしい。(※1)

4人のそれぞれの職業は、セレブ医師のエリザベス、人気リアリティー番組の司会者トラ、名門企業経営者一族のエグゼクティブ・マリア、そしてプランナーのケイト。ラゴスの富裕層に属し、高い教育を受けてキャリアを手にし、ベンツなどの高級車に乗り、瀟洒な屋敷に住み、洗練されたいい服を着ていつもお洒落な、リッチな人たち。プランナーのケイトはキャリアこそ確立してるけれど、他の3人に比べるとそこまで裕福ではないようだが、着ている服も部屋のインテリアもセンスがよく、十分恵まれた層に属していることは間違いない。

彼女たちが、レッキ-イコイー・リンク橋という特徴的な搭状の有料橋を車で行き来しつつ話は進む。高級住宅地イコイと大規模開発地レッキのフェーズ1とを結ぶこの橋は、おそらくナイジェリアの人たちにとっては有名なランドマークなのではなかろうか。

イコイ地区は、アフリカのビバリーヒルズという異名もある高級住宅地。ナイジェリアで最も裕福なコミュニティであり、アフリカで最も高価な不動産を有していると言われているそうだ。
 Google Earthで見ると整然と戸建て住宅が立ち並ぶ再開発地レッキ・フェーズ1(※2)も、ラゴス州有数の不動産価値を持つ地域としての評価を得ているとのこと。話はほぼこの2つの地区を舞台にしていると思われる。

それにしても、黒人の人は年が全然わからない!(俳優さんの年齢は不明。)見た目が若いので、恋愛においてまだまだ現役なのも無理なく思える。富裕層だからなのか?
 4人のうちの誰が特別主人公ということもなく、いくら友だちとはいえ、そこでソレばらすかい?!などとツッコミつつ、この手のドラマの展開としてはありがちな話を全てが物珍しいがゆえに退屈することなく見ていたが、一番嫌なオンナだと思っていたトラの告白が衝撃的に重すぎて地面にめり込んだ…。世界の近代的な大都市ならどこでも『セックス・アンド・ザ・シティ』的な映画を作り得ると思うが、この筋書きに持ち込む都市はまず他にあり得ないのでは…。発展著しいナイジェリアはラゴスだけれど、アフリカ女性の置かれている惨い現実が唐突にその狂暴な顔を現したように感じた。裕福な層といえどもその現実と無縁ではないのだ。アフリカ女性とざっくりひとまとめにするのは、かなり乱暴かもしれないが…。

※1 Google Earthのストリートビューで降り立ってみると、イコイからラゴス島を少し西に行くと街は既にスラムの雰囲気を帯びてくるし、さらに本土に渡って奥に進むと、粗末な家が庭も緑地もなくビッシリと一様に建ち並び、果てしなくどこまでも広がっていて、否応なく貧しさを感じる。

※2 かつてこのあたりは、マロコの住民30万人が暮らすスラムだったが、1990年、当時の政権が、土地が低く、埋め立てとインフラ整備を必要としているという理由で補償もなく強制的に住民を立ち退かせ、旧コミュニティを消滅させたという経緯を持つらしい。30万人が家を失った訳である。
Cisaraghi

Cisaraghi