emily

私の居場所の見つけかたのemilyのレビュー・感想・評価

私の居場所の見つけかた(2016年製作の映画)
3.5
 母親のリタと娘のルーシー、リタの恋人の家を転々として生活している。都合が悪くなったらおんぼろ車に乗り込み、違う街へと。新しい街で無一文になりカフェでなんとか雇ってもらい、二人は生活の基盤を立てていく。二人の家を持ち上手く行っていたが、ルーシーも学校で色々あり、常に男に依存する母親との間に溝が出来ていく・・・

 母と娘。二人の間にその境界線は薄い。だらしない母親だからこそ、娘は支えないといけないと思う。そして母もまた娘のためになんとか頑張りたいと思う。しかし二人の絆は深いようで、極細の糸でつながれているのだ。成長していく思春期の娘、変わらない物は何一つない。母親が母親らしく、娘は娘らしくの常識を覆す関係が暖かである。周りを取り囲む人たちも二人と接する事で人間性がしっかり見えてくる。そこにルーシーの葛藤やリタの苦悩が交差していくのだ。人は一人で生きられない。当然誰かの力を借りる事は必要である。ルーシーにとっては母親との時間が貴重で楽しくて、二人での暮らしが続けばそれでよかった。しかし周りの男どものように母の力になる事は出来ない。もどかしさと葛藤、新しい男との暮らし。

 流れゆく景色、紅葉に寄り添うやさしい音楽が二人の関係の温かさを語る。たくさんの物が変わって行く中で変わらない物もある。母と娘の関係だ。すべてが変わったとしても、二人の間に根付く親子関係だけは変わらない。友達のようでいても、母はやっぱり母で娘はやっぱり娘。大事なのは形ではなく、お互いを思いやってるその気持ちだ。男と一緒の暮らしでも、母が居る場所、それが娘の居場所だ。それは娘だけではなく、母親も同じなのだ。娘が必要と思うように母だって言葉にせずとも必要だと思っている。だから”愛してる”が自然に出てくるのだ・・

 探し求めてもみつからない自分の居場所・・・すでにそこにいるから気が付かないのかもしれない・・
emily

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